「甘草」(カンゾウ)とその成分について

甘草は、マメ科の植物の根およびストロン(地上をほふくする茎)の部分で、

トリテルペノイド配糖体であるグリチルリチンを主成分とする生薬です。

処方全体の作用を調和させたり、他の生薬の毒性を緩和させる目的であったり、

鎮咳、袪痰、鎮痙、止痛、健胃、清熱解毒などの効果を目的にしたりで、

漢方処方の約7割には甘草が配合されています。

また、「カンゾウ末」として、SM配合散、FK配合散というような胃腸薬にも使われています。

 

主成分のグリチルリチンには、肝機能の改善、抗炎症作用、抗アレルギー作用などが認められ、

グリチルリチン製剤として、グリチロン配合錠、ネオファーゲンなどの医療用医薬品が存在します。

市販薬でも、カゼ薬、鼻炎薬、胃腸薬などに含まれていることがあります。

 

さらに、グリチルリチンは、ショ糖の150~200倍の甘味がありますので、

甘味料といった食品添加物として、しょう油、味噌などの調味料のほか、漬物、ふりかけ、つくだ煮、清涼飲料水、魚肉ねり製品、お菓子などさまざまな加工食品に使われています。

気付かないうちに大量に摂取している可能性のある成分です。

 

 

偽アルドステロン症とは

グリチルリチンの摂取によって、あたかもアルドステロンが過剰になったかのような、血清カリウムの低下と、血清ナトリウムの上昇が出現する状態を(原発性に対して)偽性のアルドステロン症といいます。

カリウムの低下により、筋肉の障害(脱力・筋肉痛・四肢けいれん)や、不整脈(心電図異常)、

ナトリウムの増加により、むくみ(体重増加)や血圧上昇、

というのが考えられる主な症状になります。

 

摂取量の目安

さて、グリチルリチンをどれくらい摂取してしまうと副作用が現れるのかというと、個人差がとても大きくて、これくらいという線引きができないのが実情です。

グリチルリチンの代謝に腸内細菌が関わっていることも影響しています。

教科書的には、甘草の量で2.5g/日を超えて長期に使うと注意、とか書かれていたりもしますが、この倍くらい多くても平気な人もいれば、これより少なくても症状がでる人もいます。

メーカーによっても甘草から抽出される成分量には多少の差があると考えられます。

しかしいずれにしても、甘草の服用量が多いほど副作用のおこる可能性は高くなるわけなので、

患者さんが病院で漢方薬の処方を受ける場合、「関係ないと思ってDr.には言っていないけど実はこういう薬も飲んでました」というようなことは、できるだけ避けて頂きたいと思います。

甘草の重複には特に要注意です。

甘草の配合量が多い「芍薬甘草湯」(しゃくやくかんぞうとう)などは頓服が基本です。

 

同じ甘草でも、炙甘草を使っている製剤の方が、副作用が起こりにくいと言われます。

また、水分・Naの貯留に関しては、白朮・茯苓などの利水薬ととも配合することによって軽減されているかもしれません。

 

[参考]漢方薬副作用百科 [ 内藤裕史 ]

 

グリチルリチンと他の生薬との関係

副作用の出方に個人差がある、と書きましたが

もう一つ、漢方薬の構成による、生薬の組み合わせ方も影響しています。

例えば、「小青竜湯」(しょうせいりゅうとう)の医療用エキス製剤に使われる甘草の量は1日量3gであり、

他の麻黄剤に配合される甘草の量に比べて、倍くらいに多い処方です。

だからといって「小青竜湯」が偽アルドステロン症を起こしやすいのか、と言えばそうではありません。

小青竜湯には五味子(ゴミシ)が含まれていて、有機酸が含まれる酸っぱい生薬ですが、

これを同時に煎じると、この酸の影響で、甘草からのグリチルリチンの抽出量(溶解度)が低下することが考えられていて、

つまり「小青竜湯」においては、甘草の量が少なければ、期待する効果も得られないのです。

よって、どれくらいの量の漢方薬を摂取してしまうと副作用が現れるのか、

甘草の量だけでは一概には言えません。

 

※補足(利尿剤について)

高血圧や浮腫の治療に、利尿剤が使われることがあります。

その中にチアジド系(サイアザイド系)利尿薬やループ利尿薬に分類される薬剤があります。

併用薬の確認時には、これらの利尿剤の副作用に「低カリウム血症」があることも知っておくべきでしょう。

グリチルリチンと合わさると、副作用症状の出る可能性が増すかもしれません。

成分名で言うと、チアジド系利尿薬としては、トリクロルメチアジド(フルイトラン)や、ヒドロクロロチアジド、ベンチルヒドロクロロチアジド(ベハイド)など、

ループ利尿薬としては、フロセミド(ラシックス)や、トラセミド(ルプラック)、アゾセミド(ダイアート)などがあります。

ヒドロクロロチアジドは、「プレミネント」や「ミコンビ」、「エカード」、「コディオ」などの降圧剤にも少量配合されています。

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