生薬としての「麻黄」(マオウ)は、

主に、発汗作用・鎮咳作用・鎮痛抗炎症作用を期待して、

多くの漢方薬に配合されています。

まおう科の低木で、薬用部位は地上茎です(根は除きます)。

 

「麻黄」(マオウ)の成分

麻黄の主要成分というのは、

エフェドリン、メチルエフェドリン、プソイドエフェドリン、ノルエフェドリン等、

アンフェタミン誘導体ともいえる、エフェドリン系アルカロイドであり、

麻黄の作用の多くはエフェドリン系アルカロイドの作用と考えてもいいくらいです。

日本薬局方では、「麻黄」はエフェドリン系アルカロイドを0.7%以上含むもの、と規定されています。

 

エフェドリンの効果

さて、医療用の「エフェドリン塩酸塩」といえば、

・気管支喘息、気管支炎、感冒などにおける咳嗽

・鼻粘膜の充血・腫脹

・麻酔時の血圧低下

に対しての適応を持っています。

つまりエフェドリンには、

・気管支平滑筋を弛緩させる

・局所の鬱血除去(α受容体作動薬)

・交感神経興奮作用により血管収縮→血圧上昇させる

といった作用があるということです。

 

 

「麻黄」による副作用

というわけで、漢方製剤において「麻黄」を使う場合、

まず交感神経刺激、中枢興奮作用が問題となります。

起こりやすい副作用として、

血圧上昇・動悸・興奮・不眠、その他、排尿障害も考えられます。

これらは、もしかしたら起こるかもということではなくて

エフェドリン含有のための作用なので、起こったとしても全くおかしくない副作用です。

特に、高血圧の人、心臓に疾患のある人は要注意であり、循環器系の病態が悪化すると危険な人は、原則、「麻黄」は服用すべきではありません。(もし服用するときは短期間のみで)

 

「麻黄」の含まれる漢方薬

カゼで何気なく処方される、葛根湯、小青竜湯、

ダイエット目的に使っている人もいる防風通聖散、

高齢者によく用いられる麻黄附子細辛湯、

その他、麻黄湯、越婢加朮湯、麻杏甘石湯、五虎湯、薏苡仁湯なども「麻黄」が含まれます。(配合量は少ないものから多いものありますが)

 

漢方薬でこんなことも

よく、カゼや花粉症のときに葛根湯や小青竜湯のことを、抗ヒスタミン薬みたいには眠くならない薬、とメリットのように言いますが、

「麻黄」が効いていれば眠気が起こりにくいのは当然のことで、

使い方を間違えると、覚醒作用で逆に眠れなくなることもあります。

(わずかですが乳汁中にも成分が移行してくる可能性があります。大きな問題にはなりにくいですが、もし赤ちゃんが寝てくれない等があると大変ですので、授乳中の服用も少し気を付けた方がいいかもしれません。)

 

エフェドリンは交感神経α受容体作動薬ですので、

末梢血管に作用すれば、血管は収縮し血圧を上げます。

尿路の平滑筋に作用すれば排尿困難、尿閉を起こします。

もしかしたら

前立腺肥大のある高齢の方で、カゼに麻黄附子細辛湯や市販のエフェドリン系の成分を含むかぜ薬を服用し、排尿困難が悪化している人がいるかもしれません。

 

その他の副作用として、

胃腸の弱い方では、食欲不振、腹痛を起こす可能性があります。

またすべての生薬に言えることですが、

薬疹や肝機能障害が起こることもあり得ます。

 

[参考]漢方薬副作用百科 [ 内藤裕史 ]

 

胃薬の併用に注意

麻黄のエフェドリンはアルカロイドであり、アルカロイドの吸収は胃内のpHの影響をうけます。

通常は、胃内のpHは胃酸があるため酸性です。

しかし、逆流性食道炎の薬(プロトンポンプ阻害薬)や、

ガスターなどで知られるH2ブロッカーというのは、

胃酸を減らして胃内のpHを高めます。

よって、そのような胃薬を併用している場合は、通常よりもエフェドリンなどのアルカロイドの吸収が高まると考えられるので、

つまり副作用も起こりやすくなる可能性があります。

(逆に、葛根湯や麻黄湯をお湯で溶いて服用した方が良いと言われる理由の一つは、胃内pHの上昇により、麻黄の効果がより速やかに表れやすいから、という側面もあります。)

 

麻酔時

中枢興奮作用があるわけですので、

麻酔薬の効果に影響を及ぼす可能性があります。

手術の予定がある場合、麻酔薬を使用することが分かっている場合は、

可能な限り、あらかじめ麻黄の摂取は控えておいた方が良いと思います。

 

その他、西洋薬との併用について

すでに、交感神経刺激作用のある薬、中枢神経興奮作用のある薬、強心作用のある薬などを服用されている場合、

麻黄と併用することで作用が増強されるおそれがあります。

カテコールアミン製剤
キサンチン系製剤
甲状腺ホルモン剤
MAO阻害剤
ジギタリス製剤
など

また、尿のアルカリ化剤は、エフェドリンの尿からの排泄を減少させる可能性があります。

逆に上記と反対の作用の薬剤と併用すれば、作用の減弱が考えられます。

α遮断薬や、β遮断薬、硝酸薬など。

心配なときは予め、処方医やかかりつけ薬剤師にご相談ください。

 

ドーピング検査

覚せい剤原料となり、覚せい剤取締法によって規制されるのは、エフェドリンを10%以上含有するものです。麻黄のエフェドリン量は少量なので、漢方薬が問題になることはありません。(※)

しかし、

エフェドリンの類はドーピング検査では禁止薬物であり、「麻黄」もそうです。漢方薬は「うっかりドーピング」が多い例です。スポーツ選手の方(、スポーツ選手に漢方薬を販売される方)は気をつけて下さい。

⇒コラム葛根湯やのど飴もドーピングに!?市販の風邪薬や漢方薬で起きる「うっかりドーピング」とは

 

※一般の方が、麻黄からエフェドリンを単離しようとするのは違法です。

 

追記

麻黄の効能の一部はエフェドリン類以外の成分も関与している可能性があり、必ずしも麻黄の効果はエフェドリン類にのみ依存するわけではないと最近は考えられています。そのため、副作用の起こりにい、エフェドリン類を除去した麻黄エキス剤の研究が現在進められている、とのことです。ただし日本薬局方の「麻黄」はエフェドリン系アルカロイドを0.7%以上含むものと規定されているので、エフェドリンを除去した麻黄は「麻黄」ではないことになってしまい、通常の麻黄と同様のものとして使えるようになるまでには高いハードルがありそうです。

 

  関連コンテンツ

スポンサーリンク