麻子仁丸(ましにんがん):MNG

高齢者や胃腸虚弱な方の、弛緩性便秘、常習便秘に用いられます。

胃腸のはたらきが弱く、腸の動きがゆっくりだと、大腸内に長時間、便が停滞してしまいます。

そのため、便が大腸内で乾燥してきて硬くなり、ときに塊状、コロコロ便になります。

高齢や病後などで体内の潤いが減少している場合にも、胃腸内に熱がこもりやすく、同じような便秘になります。

麻子仁は、そのような便秘に対して、下剤の作用にプラス、腸内の乾燥を潤すことで、便通を改善させる効果をもつ漢方薬です。

センノシド製剤で効果がないときにも処方されることがあります。

医療用エキス製剤には、ツムラ、コタロー、オースギがあります。(126番)

 

 

麻子仁丸の出典

傷寒論・金匱要略(3世紀)

麻子仁丸の構成(配合される生薬)

  • 大黄(ダイオウ)
  • 麻子仁(マシニン)
  • 杏仁(キョウニン)
  • 枳実(キジツ)
  • 厚朴(コウボク)
  • 芍薬(シャクヤク)

 

麻子仁丸

=(大黄+枳実+厚朴)+(麻子仁+杏仁)+芍薬

小承気湯+(麻子仁+杏仁)+芍薬

=(大承気湯-芒硝)+(麻子仁+杏仁)+芍薬

つまり、麻子仁丸は小承気湯や大承気湯の仲間です。ただし麻子仁丸では、厚朴や枳実の配合量は抑えられています。

大承気湯(だいじょうきとう)の解説ページ

小承気湯(しょうじょうきとう)の解説ページ

麻子仁丸の効能・適応症状

便秘、常習便秘、急性便秘、術後・病後の便秘、発汗過多に続発する便秘

食欲不振、腹部膨満、腸内異常発酵

便秘を伴う痔核

便秘に伴う頭痛、頭重感、のぼせ

便秘に伴うニキビ(ふきでもの)、皮膚炎、湿疹

  • 保険適応外の症状を含みます。
  • 上記の症状に応用が可能という意味であり、すべての症状が麻子仁丸で治せる、ということではありません。

麻子仁丸の作用の特徴

麻子仁丸の特徴は、この処方の名前にもなっている「麻子仁」(ましにん)と、

もうひとつ、「杏仁」(きょうにん)の作用です。

「仁」は果実の種子のことです。

 

麻子仁は、アサ科(古い教科書ではクワ科)アサ属アサの成熟した実を乾燥させたものです。殻を割ってその中身(仁)が用いられます。

脂肪油が多く含まれています。

この油分には、腸管の刺激作用と、便を軟らかくすることで排便を促進させる作用があります。

同様に、杏仁はバラ科のアンズの種子であり、やはり油分を多く含み、便を軟らかくする作用があります。

麻子仁と杏仁とで腸内を潤して、便の動きを滑らかにしています。

 

「小承気湯」の部分は、

大黄の瀉下作用と、枳実・厚朴で蠕動運動を強めます。

しかし高齢者や胃腸虚弱な方では、このような腸を刺激する薬では、腹痛を伴ってしまうことがあります。

そこで脾の働きを助け、鎮痛の効果のある芍薬が加わり、腹痛を予防しています。

(また、大黄と芍薬の配合は、脾陰を補って腸内の熱を取る効果もあります。)

 

したがって、「麻子仁丸」というのは、

高齢者や病後にみられるような、身体のうるおいが低下した状態で、腸管内が乾燥して起こる便秘、

または、腸の蠕動運動が低下して、便の停滞時間が長くなり、水分が過剰に吸収されて硬くなった便秘、

に対して使う薬ということになります。

硬い便を、スムーズに自然に近いかたちで出せるようにという薬です。

麻子仁丸についての注意点

  • 麻子仁丸だけでは気や血を補うは効果はほとんどなく、あまり体質改善を目的に長期連用する方剤ではありません。快便を得たあとは、中止して構いません。
  • 効果の出方には個人差があるので、服用量は、適宜調節してください。
  • 血虚による便秘には「潤腸湯」(じゅんちょうとう)が使われます。(参考記事→潤腸湯と麻子仁丸の違い
  • 腸の蠕動運動の低下は気虚なので、「補中益気湯」(ほちゅうえっきとう)などが必要なこともあります。
  • 大黄甘草湯などよりも穏やかに効きそうなイメージはありますが、大黄剤であることに変わりありません。
  • 麻子仁丸でも腹痛を起こしてしまうような場合は、大黄の入っていない「小建中湯」(しょうけんちゅうとう)などが良いかもしれません。
  • 大黄が一応含まれますので妊婦さんは注意が必要です。
  • 本来の麻子仁丸であれば丸剤なので、蜂蜜とともに各生薬を混ぜて、丸めて服用するものです。丸剤の方が、腸を潤す効果が持続しやすいと考えられます。蜂蜜にも便通改善効果があります。エキス製剤には蜂蜜は入っていません。

麻について補足

麻子仁はアサの実であり、麻の実(おのみ)と言えば、小さいものが七味唐辛子の中にも入っていることがあります。

一方、アサの葉や花の方は大麻(マリファナ)などと呼ばれます。

実(種子)と茎(繊維として利用)以外は、大麻取締法で厳しく規制されています。

麻子仁を入手して、それから大麻を栽培しようとしてはいけませんし、また、しようとしても出来ません。

生薬として用いる麻子仁は(食用のものも)、発芽防止処理が施されています。

 

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