便秘を治す薬といえば、便秘薬や下剤でしょう!

確かにそうですが、ではどの便秘薬を選べばいいのかと考え始めたら意外と難しいものなのです。

便秘とは

まず、どのようなものを便秘と言うのでしょうか。

便秘を定義するのは難しい

毎日お通じがあった人が、急に2、3日出なくなれば便秘かなというのは分かりやすい例ですが、

排便は「毎日1回」が正常なのかといえば、そういうわけではありません。

体格や食事の量、生活習慣が違えば、排便のサイクルも人それぞれ。

「毎日2回」が当たり前の人もいれば、「2~3日に1回」で平気な人もいます。

あまり、毎日出なければいけない、という頻度にこだわる必要はありません。

不快感や苦痛があるかどうか

便秘とは、要は、排便の回数が少ないことだけではなく、不快な症状を伴うかどうか。

お腹が張る、排便に時間がかかる、力まないと出ない、何度もトイレに行きたくなるけど出ない、毎日出ているけどスッキリしない、残便感がある、排便時に痛みがある、便が硬い、コロコロの便が出る、肛門が詰まった感じがする、ガスが多い、おならが臭い、腹部が不快で食欲が出ない

これらがすべて、その人にとっての「便秘」。

病院へ行って「私便秘なんです」と訴えても、「では、何日間出ていないのか?」と医師に尋ねられ、「一応、2~3日に1回は出ていますけど」と答えた時点で、医師は、だったら便秘ではないんじゃないの?と考えてしまうかもしれません。

他の人が「便秘」と言っているものと、自分が「便秘」と思っているものは、実は症状が全く違うことがあります。

便が出る出ないよりも、具体的な症状で表現することが必要となってきます。

 

 

便秘症の分類

まず、便秘はいくつかに分類して考えることができます。

分類を詳しく覚えておく必要はないかもしれませんが、分類できることを知らなければ、選ぶ薬やその飲み方が正しいのかどうか判断できなかったり、

飲んだ薬が効かなかったときに、それは何故なのかが分からなかったりします。

急性と慢性

環境の変化、例えば、新生活、慣れない職場、旅先など、不安、精神的な要因で急に便秘になることがあります。

このような便秘は、一時的なもので、いつのまにか気にならなくなっていることもありますし

必要であれば、下剤または浣腸を使って速やかに便を出して、スッキリさせることもできます。

改善するのが厄介なのは、慢性の便秘です。

適切な薬を選んでいく必要もありますし、

時には、生活習慣(食事や運動、睡眠、ストレス)から見直していく必要もあります。

軽症~重症

当然、ひとつの下剤を軽症の人と重症の人とに同じように使うことはできません。

中等症の便秘の人にはちょうど良い強さの下剤でも、軽症の人には下痢をさせてしまいますし、

重症の人にはそれでは効かず、他の薬も併用しなければいけないことがあります。

機能性か器質性か(または原発性か二次性か)

次に、大便を作って出すという大腸の機能が悪いために起こる便秘と、それ以外の便秘とに分けます。

便秘を治す以前の、とても重要なところです。

器質性というと分かりにくいですが、要は、便秘を引き起こしている明らかな原因が別にあるもの。

何かの疾患があって、便秘は二次的に生じているのかもという可能性を考えておきます。

器質的な異常とは、大腸がん、直腸がん、炎症性の腸疾患、直腸脱など。

便秘だけを治療しようとして、その原因疾患を見逃してしまってはいけません。

特に腹部の不快症状がある人は、定期的に大腸内視鏡やCTを受けておくことは大事です。

また、うつ病などの精神疾患、糖尿病や甲状腺機能低下症などの代謝性の疾患、脳血管障害の後遺症、パーキンソンなどによる便秘、

そして、副作用として便秘(薬剤性便秘)を起こす薬剤がたくさんあります。抗ヒスタミン薬や抗コリン作用のある薬、Ca拮抗薬、鉄剤、モルヒネのようなオピオイド系の鎮痛薬・・・。風邪薬を飲んだとき、頻尿の薬を飲んだときに便秘になった経験のある人も多いかと思います。

弛緩性・痙攣性・直腸性

器質性の便秘は除外できたとして、

機能性の便秘の方は、さらに3つに分類されます。

①便が大腸を通過する時間の長いタイプ(弛緩性)

女性、高齢者など体力の弱い人に多いタイプ
大腸が緩んでいる状態
蠕動運動がゆっくりなので便の水分が吸収されやすく便が硬くなる
便は太くて硬い
腹痛は少ないが、膨満感がある

②大腸が過剰に収縮しているタイプ(痙攣性)

若い人に多いタイプ
自律神経の乱れで、大腸が過剰に収縮して管が細くなり、便の通りが悪い
だから便が細い、または途切れた細かい便になる
便秘と下痢を繰り返すこともあり
過敏性腸症候群もこれに分類されます
ストレス、過労、睡眠不足、香辛料の摂りすぎなどが原因

③便の排出に問題があるタイプ(直腸性)

便意があってもその時にトイレに行けなくて(または意識的に)ガマンすることが多い人
または食物繊維の摂取が少ない人
または高齢になるにつれて多くみられるタイプ
大便が直腸まできているのに、排便反射が鈍ってくるため直腸・肛門が反応せず、うまく排出されない

このように、便秘の症状が様々あるのは、その原因が様々あるからなのです。

便秘をどうにかしたいと思ったら、その原因についてまで考えてみなければいけません。

例えば、大腸が過剰に収縮している状態(痙攣性便秘)に対して、大腸刺激性の下剤を使うことは不適切だということも分かります。

漢方的な分類

一方、漢方的に便秘を分類すると、まず、虚証のものと実証のものに分けることができます。

それをさらに分析して、便秘という状況以外に、冷え、気虚・血虚・気滞・気鬱・瘀血・燥熱などが関係していると考えられれば、それに応じた治療が行われます。



便秘薬の問題点

とにかく便が出ればいいのだからどんな便秘薬でも構わないんじゃないの?

と、そんなわけにはいけない理由として記しておきます。

便秘薬は意外と注意が必要な薬です。

・適量には個人差があること。誰でも初めて使用する場合は、通常、少量から開始して、効かなければ増やしたり、効き過ぎたら減らしたり中止したり、調節していただく必要があります。

・大黄やセンノシド製剤の連用は、習慣性や依存性のおそれがあること。はじめのうちは、量を増やすほどよく効くけれど、徐々に、下剤を使わないと出ないとか、下剤を使っても出ないという状況になってきます。大黄は漢方薬だからいいのでは?というのも間違いで、タンニン酸の作用で大量に用いるとむしろ便秘を招くことがあります。過ぎたるは猶及ばざるが如しです。

・マグネシウム製剤の問題点は意外と知られていないけど

高齢者や腎機能の低下している人の場合は、高マグネシウム血症を起こすおそれがあること。症状は吐き気、倦怠感、脱力感、徐脈など。定期的に血液検査が必要です。

また、意外と併用注意の組み合わせが多いこと。服用の時間をずらせば問題のないことが多いですが、抗生剤(テトラサイクリン系、ニューキノロン系)、ビスホスホネート製剤、セレコキシブ、ロスバスタチン、ラベプラゾール・・・。

・新薬は薬価が高いこと。従来の便秘薬は上記のような問題点があるのに対し、アミティーザのような新しい機序の薬は、少し吐き気などの副作用はあるものの、長期間の服用には適しています。しかしながら、センノシドなどと比べてしまうと金銭的な負担が大きく感じます。

新薬の話のついでにちょっと脱線しますが、
便秘の原因の一つに、胆汁分泌の低下が関係していると言われており、
大腸に流入する胆汁酸の量を増加させる機序をもつあたらしい慢性便秘症の薬があります。(まもなく発売される予定です)たしかディズニーのキャラクターにいそうな名前の薬。
で、加味逍遥散が便秘に効果があるのも、配合されている山梔子の胆汁分泌促進作用も関係しているのかもしれません。

・そして、便秘薬全般の問題点として、

一般的に便秘薬とは、「とりあえず便を出すこと」が目的で使われることが多く、

根本的な便秘体質を改善できなければ、便が出たとしても意外と満足度は低いのです。

便秘の体質を改善することについてはおそらく漢方薬の方が向いています。

便秘に使われる漢方薬はこんなにある

便秘の漢方薬で検索すると、ざっとこれくらい出てきます。

大黄甘草湯、麻子仁丸、潤腸湯、調胃承気湯、大建中湯、大柴胡湯、防風通聖散、桃核承気湯、大承気湯、小承気湯、小建中湯、当帰建中湯、桂枝加芍薬大黄湯、加味逍遥散、当帰芍薬散、大黄牡丹皮湯、厚朴三物湯、三黄瀉心湯、十全大補湯、五積散、乙字湯、八味地黄丸、人参湯、真武湯、中建中湯、附子理中湯、四逆散、柴胡桂枝湯、六君子湯、補中益気湯、半夏厚朴湯

マイナーなものを含めるともっと増えると思います。

これらをすべて使いこなすのは大変だし、そもそも全てを覚えてもいられません・・・

中でもよく使われているものっていうのはありますが、「便秘ならコレが一番」って言える漢方薬はないのです。

症状も様々、原因も様々、伴っている疾患も人により様々、それらに対処しようとすると、様々な漢方薬が候補として挙がってくるということです。

口コミは参考になるけれど自分にも合うとは限りません。一人ひとりに合った漢方薬を選ぶことが大事です。

どうやって選ぶのかについては、簡単にはまとめられませんので(と言い訳をして)ここでは棚に上げておきます。

日常生活で気をつけること

薬を飲む前に改善できることがあります。

もしくは、薬を飲んでみたところで、十分な効果が得られないときは、やはり毎日の習慣に意識を向ける必要があります。

排便の習慣

快食・快眠・快便というように、ご飯を美味しく食べられているし、夜グッスリ眠れている人は、朝の排便においてもストレスなく済ますので、スッキリしてまたご飯をしっかり食べて、日中活発に活動して、また夜グッスリです。

勤務シフトが不規則だから難しいという人もいますが、食事や睡眠、運動のリズムは、排便のリズムに関わってきます。

時間がないからと、食事を抜いたり、ゆっくりトイレにいく時間をもたなかったり、夜更かししたり、運動量が少なかったりするのは、自ら便秘を招いているのです。

食物繊維

食物繊維も重要です。

単純に、(例えはとても悪いですが)ホイップクリームを袋に入れてケーキの上に絞り出すときとか、ミンチ肉を押し出してソーセージを作るときの機械とか、ところてんをさいごにびゅっと押し出して細長く切るやつとか、管の中に、適切な硬さのあるものがそれなりの量で入っていなければ、押し出そうとするのは難しいもので、

蠕動運動で便を移動させたり、腸を刺激させたりするためには、ある程度の便の容積が必要です。

管の中がスカスカだときれいな形の便は出ません。

軽症の便秘の場合は、食物繊維をしっかり摂るだけで改善することもあります。

ただし、便秘にはとにかく食物繊維が良いというわけではなく、これも、便秘の原因によっては、食物繊維が大腸に溜まっていくばかりで余計に苦しくなる場合もありますので、注意が必要です。

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排便時の姿勢

案外、排便時の姿勢も忘れられがちです。

直腸の角度的に、排便するときに適している姿勢は、「少し前かがみ」の状態とされています。

和式の便所に座るときみたいな上体の角度が必要です。

最近はトイレにもスマホを持って入る人もいるでしょうし、新聞や雑誌、小説、マンガを読みながら便意が来るのを座って待っている人もいるでしょう。

その時、無意識に上体が起き上がっていては、スムーズな排便は行われにくくなります。

ちょっと姿勢を意識するだけでも違いは実感できます。

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まとめ

便秘には、その原因に応じた対応をとることが大切なのが分かっていただけたと思います。

その原因というのは、体質や生活習慣(または他の疾患や併用薬)など一人ひとり異なります。

薬を利用するしないに関わらず、生活習慣の改善も大事です。

どのような体質にどのような漢方薬を用いればよいのかについては、いずれまた。

 

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