半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう):HST

瀉心湯類の代表的方剤です。

瀉心湯の瀉心とは、心窩部(みぞおちあたり)のつかえを瀉して(取り除いて)スッキリさせる薬という意味です。

心(ココロ)のつかえを取る、という意味もあります。

胃~胸(みぞおち)のつかえを伴う消化器症状に広く用いられます。

漢方的には、体力は中等度~やや実証、

食欲はある、ないわけではない、が日常的なストレスが影響してか、

食べた後に胃もたれを起こす、胃がきちんと働いていないような感じがする、消化不良・軟便傾向である、

健康そうに見えるが日頃から胃薬を常用しているようなタイプの人に使われることが多い漢方薬です。

最近では、抗がん剤による副作用(口内炎、下痢)の軽減を目的に使われることも増えています。

医療用エキス製剤は、東洋・オースギ・クラシエ・コタロー・ジュンコウ・ツムラ・テイコク・マツウラ・三和・太虎堂・本草・JPSなど多数出ています。

クラシエは錠剤タイプのものもあります。

 

 

半夏瀉心湯の出典

傷寒論、金匱要略(3世紀)

半夏瀉心湯を構成する生薬

半夏(ハンゲ)
黄芩(オウゴン)
黄連(オウレン)
乾姜(カンキョウ)※
人参(ニンジン)
大棗(タイソウ)
甘草(カンゾウ)

※乾姜の代わりに生姜(ショウキョウ)を使っているメーカーもあります。

半夏瀉心湯の効能・適応症状

悪心・嘔吐、腹鳴下痢、上腹部(みぞおち)のつかえ、過敏性腸症候群(IBS)の下痢

急・慢性胃腸炎、胃下垂、胃弱、食欲不振、神経性胃炎、胃十二指腸潰瘍、醗酵性下痢、口臭

ノロウイルス感染による下痢や吐き気

消化不良、胃もたれ、逆流性食道炎、胸やけ、げっぷ、しゃっくり(吃逆)、吐き気、二日酔い、乗り物酔い、口内炎、口角炎

神経症、精神不安、不眠症、つわり、神経性嘔吐

がん化学療法または放射線療法による口内炎

イリノテカン塩酸塩(抗がん剤)による遅発性の下痢

  • 保険適応外の症状を含みます。
  • 上記の症状に応用が可能という意味であり、すべての症状が半夏瀉心湯で治せる、ということではありません。

半夏瀉心湯のポイント

みぞおちのつかえ、悪心嘔吐をともなう軟便や下痢傾向の人に適します。

腹鳴(お腹にガスがたまってゴロゴロ鳴る)があるときのファーストチョイスとされていますが、腹鳴がなくても使えます。

(軽度であれば)感染性胃腸炎など、急性の下痢にも対応します。

寒熱によらず用いることができます。

抗生物質などの薬剤による胃腸障害に用いられることがあります。

がん化学療法による口内炎に対しては、半夏瀉心湯でうがいをする方法が有効とされています。

口内炎に対する含嗽療法

コップ半分程度の常温水に半夏瀉心湯1包を攪拌し、数回に分けて口腔に含み、1回5秒以上ゆすぐように患部にあてます。含嗽後は内服して下さい。(抗がん剤によって、もし吐き気が強くある場合は飲み込まずに、うがいのみでも可です。)

半夏瀉心湯の副作用・注意点

激しい腹痛を伴う下痢には適しません。

燥性がつよいので、胃陰虚の悪心・乾嘔には用いません。
(口渇、口燥、乾嘔、便秘など)

半夏瀉心湯で一時的に自覚症状が改善したとしても、潰瘍などの器質的病変がある可能性も否定できないので、病院でも検査を受けられることをお勧めします。

苦味の強い漢方薬です。お湯に溶いて服用する場合は、生のショウガのしぼり汁を混ぜると少し服用しやすくなるかもしれません。

イリノテカンによる下痢には、服用開始直後に反射的に起こる早期性下痢と、代謝物によって数日後に発現する遅発性下痢があります。半夏瀉心湯は、イリノテカンの遅発性下痢の発現を抑制する機序が考えられています。(早期性下痢への効果はあまり期待できません。→抗コリン薬が使われます。)下痢を軽減するために、イリノテカン使用予定日の数日前から半夏瀉心湯が処方されることがあります。

  • 用法用量や使用上の注意は、医師・薬剤師の指示、または添付文書の説明を守ってください。

半夏瀉心湯の加減方

  • 生姜瀉心湯:半夏瀉心湯の乾姜の量を減らし、代わりに生姜を加えたものです。生姜の制吐作用を利用して、特に悪心・嘔吐・げっぷ(曖気)、胸焼けがみられるときに適します。
  • 甘草瀉心湯:半夏瀉心湯の甘草を増量したものです。鎮痙作用のある甘草を増やすことで、下痢や腹鳴がつよいときに適します。または、つよい精神症状を伴う場合に用いられることがあります。
  • 黄連湯:半夏瀉心湯の黄芩を桂枝(または桂皮)に代えたものです。下痢よりも、冷えによる腹痛や胃痛、吐き気がつよいときに適します。

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