薬局での薬の売り方は大きく変わる日がくる

断っておきますけど、私はITについてはそれほど詳しくありません。

地方のどちらかというと田舎の、小さな調剤薬局に勤務する、普通の薬剤師です。

だから以下の話はすべて、根拠もない妄想だと思って頂いても構いません。

 

以前からもよく、SNS等で交わされるような、薬剤師の仕事がAIに奪われてしまうのかどうかの意見を気にはしていますが、

薬剤師の仕事はそんな簡単に機械化できるものじゃないだろうと、いつまでも楽観的に考えてもいられませんし

AIに置き換わってきたら薬剤師はどうなるんだろうと不安がっているばかりでもいけません。

しかし、

少なくとも、AIによって薬の売り方は大きく変わるような気はします。

それは、近い将来なのか遠い未来なのかは全く分かりません。

薬剤師や薬学生の中には、将来は漢方相談の方を主に頑張っていきたいと考えている人も多いかもしれませんが、

漢方相談の仕事について、AIが大活躍しているのではないかという未来を考えてみましょう。

 

AIによる漢方相談

携帯ショップに行けばロボットの「ペッパーくん」が出迎えてくれます。

同じように、漢方薬を販売している店舗では「カンポーくん」(例えばですよ)が待機しています。

「ペッパーくん」のように真っ白いロボットではなくて、髭を生やしたお爺さん風のロボットの方が雰囲気があるかもしれません。

漢方薬を買いに来られた人に対して「カンポーくん」が質問をしてくれます。

質問の答えに応じて、さらに詳しい体調や症状を効率的に聞いていきます。

初対面の薬剤師に、年齢、身長や体重、便の回数などは言いづらいけど、ロボットになら正直に話してくれるでしょう。

脈診や腹診は難しいかもしれませんが、

カメラがあれば、舌診は可能です。

体温を測るセンサーがあれば、お腹や指先の冷え、のぼせも感知してくれます。

体格、声の大きさ、歩く速さ、皮膚の色艶など、客観的に測定して数値で記録します。

過去の膨大な症例と照らし合わせて、

そのときその人に最も効果の得られる可能性が高い漢方薬を、瞬時に導き出してくれます。

根拠となるデータも見せてくれます。

 

その漢方薬を購入することに同意すれば、煎じ薬を選択した場合、その処方の情報が調剤室にいるロボットに送られます。

「チョーさん」が生薬を正確に計量し、「ゴーくん」が正確にパッケージしていきます。

煎じる順番に注意が必要なものはもちろん別包にしてくれます。

「チョーさん」と「ゴーくん」によって調合されているあいだ、

「カンポーくん」は症状に合わせた養生法の指導をしてくれます。おすすめの献立も教えてくれます。

最後に「カンポーくん」が薬代の計算をして、カードまたはスマホで電子決済して会計が終わります。

やり取りはすでに記録されているので、あとから薬歴を作成する必要はありません。

次回来局時もスムーズに対応できます。

漢方薬を服用する前と後で、どのように体調が変化したか、分かりやすくグラフにして示すこともできます。

というわけで、

ここまでは、薬剤師がいなくても、漢方相談はできてしまいます。

 

では薬剤師は何をするのか

もちろん、すべてをAIに任せることはできないので、AIの出した答えに問題がないかを確認する必要があります。

AIの学習を手助けすることも必要です。それは薬剤師でなければいけないと思います。

漢方薬局であれば、取り扱っている生薬の管理が必要です。

生薬は、同じ植物であっても産地や加工方法、管理方法によって品質にバラツキがあります。AIの出した答えが同じでも、扱っている生薬が粗悪なら、効果に差がでるおそれがあります。そこで、より品質の高い生薬を選別できる技能が必要です。それをロボットに任せるのは不可能です。(→興味のある方は「漢方生薬ソムリエ」で検索を)

そしてやはり、「ロボットにではなく、ぜひともあなたに相談したいんです」という人が来てくれれば、じっくりと話を聞きます。

場合によっては、AIが出した漢方薬はこれだけど、こっちの方がいいかもというアレンジを加えます。

オリジナルの調合で勝負してもいいかもしれません。

また、稀な症状、些細な訴えについては、ロボットには気付くことができないこともあるでしょう。

自分の右腕となるAIを育てていきます。

AIを導入したとしても、仕事を探そうとすれば見つかるわけで、仕事が全く無くなるわけはありません。

 

 

漢方の勉強も変わる

ある漢方勉強会で、有名な漢方医が「傷寒論、金匱要略の条文くらいはすべて覚えておくべき」という話をされて、その時は確かにそうかも、と思ったのですが、

AIが条文を覚えていてくれて、必要に応じて、関連のある条文を引き出してくれるのなら、わざわざ覚えることに時間に使うことはない気もします。

ただし、その文章をどう解釈するかは人間にしかできないので、傷寒論や金匱要略の勉強はやはり必要だけれど、

これからは漢方薬の勉強の仕方も変えていかないといけないのかもしれません。

少なくとも○○病には○○湯というような覚え方をしているなら、AIには相手にもされません。

一方で、漢方の師匠の下で最低何年修業しなければ一人前にはなれない、みたいなことは言えなくなるかもしれません。

的確な漢方薬を導き出せるシステムの開発に携わってみたいと考えていた時期もありましたが、

そこは当然、大学や病院などの豊富なデータベースを使って開発して頂いた方が、優秀なロボットが作られるはずで、

薬剤師一人ひとりが研鑽を積むよりも、そのロボットが普及してくれることが、社会にとって良いことであれば、いずれそうなるのでしょう。

 

いずれにしても、だれもが自分の体質に合った漢方薬をきちんと選べるような時代になれば、私の漢方ブログの情報などは必要なくなるのです。

情報の内容を変えて、発信は続けたいとは思いますが。

 

登録販売者、調剤薬局事務も厳しくなる

まず、登録販売者の仕事内容をきちんと把握しているわけではないですが、

コンビニもドラッグストアもスーパーも、レジ(会計)はどんどん無人化が進むだろうし、商品管理の部分も効率化が進むだろうから、

やはり、登録販売者でなければできない仕事というものを一層していかなければいけないけれど、

そうなると、機械と薬剤師と登録販売者とで、仕事の奪い合いは激しくなってきてしまうのかもしれません。

調剤薬局の事務さんも厳しいだろうと思います。

現に、昔からある昔ながらの調剤薬局に比べて、最近の効率化された調剤薬局では、事務さんは必要最低限の人数しか雇われていません。

処方入力はQRコードで読み取ればいいようになっているし、適切な大きさの薬袋も自動に発行されますし、オンライン化によってレセプトにかかる時間も減っています。

うちの事務さんがこれを読んでいたら非常に申し訳ないけれど、

例えば「ちょっと体調が悪いので2.3日休みたい」と急に言われたとしても、自分の仕事が増えるからちょっとイヤだなと思うくらいのことで、仕事が回らなくなることはなく、ゆっくり休んで頂いて構わないのです。

調剤報酬の算定については事務さんにすべてお任せの薬剤師しかいない薬局であれば話しは別ですが、

事務の仕事も効率化されていく中で、

薬剤師の仕事もAIによって効率化されていって、薬剤師の仕事に余裕が生まれて、事務の仕事もできますよという薬剤師がいれば、薬局には事務さんがいなくても大丈夫だと判断する経営者がいてもおかしくない話です。

薬局に事務さんが全くいないというのは不安かもしれませんが、グループ薬局ならば、本部のようなところに優秀な事務さんがいて、あとは、必要時にだけ遠隔操作でパソコンを操作してもらえばいいかもしれません。

極端な話ですが、人か機械か、あとはコストの問題次第となっていきます。

 

薬剤師の未来

AIの話をするとすぐに、AIに自分の仕事は奪われるのか、薬剤師は不要になるのか、という議論をする人がいますが、

今まで薬剤師が費やしていた、単純作業、めんどくさい事務作業、煩わしい管理業務なんかをすべてAIに任せてしまえれば

これからは、今まで時間に追われ、やりたくてもやれなかったことや、自分の得意なことに専念できる時間が増えるわけだから、

もっと患者さんの満足する仕事をして、感謝されて、

薬剤師の仕事はもっと楽しくなっていくのではないか、とは考えられないのでしょうか。

そういうところから、薬剤師としてやりたいことがある人と、指示がなければ何もできない人とで、差は開いていくのだろうと思います。

 

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