腰痛にも、カゼにも、胃もたれにも、更年期障害にも、色々な症状に使われる「五積散」(ごしゃくさん)

一体どういう漢方薬であるのか、解説します。

 

五積散の構成生薬

62番の「防風通聖散」(ぼうふうつうしょうさん)は18種類もの生薬が使われています。

63番の「五積散」(ごしゃくさん)もそれに引けを取らない生薬の多さです。

当帰、川芎、蒼朮(白朮)、茯苓、甘草、白芷、
枳殻(枳実)、陳皮、半夏、厚朴、桔梗、乾姜、
桂皮(肉桂)、芍薬、生姜、大棗、麻黄

と、一応書きますが、

ツムラ→蒼朮、枳実で、乾姜なし生姜多め
テイコク→白朮、枳実
コタロー→蒼朮・白朮ともに配合、枳殻
などメーカーにより違いがあります。

色々な生薬が入り過ぎていて特徴が分かりにくいかもしれません。

いずれにしても、まず「五積散」は冷えがある人、冷えると症状が悪化する人に用いるのは間違いありません。

防風通聖散と五積散の決定的な違い

 

 

それでは五積散の生薬に色付けしながら、特徴を見つけていきたいと思います。

平胃散

まず
当帰、川芎、蒼朮(白朮)、茯苓、甘草、白芷、
枳殻(枳実)、陳皮、半夏、厚朴、桔梗、乾姜、
桂皮、芍薬、生姜大棗、麻黄

の生薬をみれば、「平胃散」(へいいさん)です。

胃薬として、食べすぎたりした時の胃もたれ、消化不良、腹痛、下痢などに用いることができます。

枳殻(枳実)も気を巡らせて、お腹のつかえを解消させる生薬です。

当帰芍薬散

当帰川芎、蒼朮(白朮)、茯苓、甘草、白芷、
枳殻(枳実)、陳皮、半夏、厚朴、桔梗、乾姜、
桂皮、芍薬、生姜、大棗、麻黄

の部分は、沢瀉を加えると「当帰芍薬散」(とうきしゃくやくさん)になります。

冷え症でむくみやすい、月経痛、月経不順など婦人科疾患に用いることができます。

桂枝湯

当帰、川芎、蒼朮(白朮)、茯苓、甘草、白芷、
枳殻(枳実)、陳皮、半夏、厚朴、桔梗、乾姜、
桂皮芍薬生姜大棗、麻黄

は、「桂枝湯」(けいしとう)です。(正確には桂皮→桂枝です)

麻黄も使っているので、あと葛根が入れば「葛根湯」です。

白芷も止痛、解表の作用があります。

クーラーで冷えてしまったとかで、風邪っぽいときにも用いることができます。

二陳湯

当帰、川芎、蒼朮(白朮)、茯苓甘草、白芷、
枳殻(枳実)、陳皮半夏、厚朴、桔梗、乾姜、
桂皮、芍薬、生姜、大棗、麻黄

をみれば「二陳湯」(にちんとう)です。

痰飲を解消する方剤です。

お腹を冷やしたために、悪心や嘔吐のするときに用いることができます。

苓姜朮甘湯

当帰、川芎、蒼朮(白朮)、茯苓甘草、白芷、
枳殻(枳実)、陳皮、半夏、厚朴、桔梗、乾姜
桂皮、芍薬、生姜、大棗、麻黄

は、「苓姜朮甘湯」(りょうきょうじゅつかんとう)ですので、

下半身や腰が冷えて痛むときに用いることができます。

その他

当帰、川芎、蒼朮(白朮)、茯苓甘草、白芷、
枳殻(枳実)、陳皮、半夏、厚朴、桔梗、乾姜、
桂皮、芍薬、生姜、大棗、麻黄

と考えれば、「苓桂朮甘湯」(りょうけいじゅつかんとう)ですし、

当帰、川芎、蒼朮(白朮)、茯苓、甘草、白芷、
枳殻(枳実)、陳皮、半夏厚朴、桔梗、乾姜、
桂皮、芍薬、生姜、大棗、麻黄

は、蘇葉を足せば「半夏厚朴湯」(はんげこうぼくとう)になります。

また、桔梗は咳止め、排膿などの作用があります。

 

その他にも探せば色々見つかるのかもしれませんが、

胃薬であり、風邪薬であり、痛み止めであり、浮腫をとる薬、抗ストレス薬、婦人科の薬、etc

更年期障害、不定愁訴に対して使われているのもよく分かります。

ただし、構成生薬が多い分、各生薬の分量は少ないので、

様々な症状に対応できて使いやすい、という反面、劇的に効くという感じはあまりないかもしれません。

症状のそれほど激しくないものに用いられることが多く、

「五積散」をベースに、症状に応じて他の方剤や生薬を足したりしながら応用されることもあると思います。

 

カゼの場合は、高齢者で「葛根湯」や「麻黄湯」ではちょっと副作用が心配で使いづらく、逆に穏やかに効いてほしいという場合に用いられています。

 

【第2類医薬品】五積散料エキス 細粒 2g×48包

 

五積散の効果と注意点

やはりその名前が表しているように、「五積」つまり5つの積滞を解決しようとする方剤です。

食積(食べ物が停滞している)
気積(気が滞っている)
血積(血の流れが悪い)
痰積(痰湿が溜まっている)
寒積(冷えている)

色々な問題を背負ってしまっている人のための漢方薬です。

そして、いずれにしても基本的には「冷えると悪化する症状」というのがポイントです。

もともと水毒の、むくみやすい体質の人に、さらに「冷え」が加わると、

寒湿という状態になります。これが、腰痛、関節痛、頭痛、月経痛、神経痛、腹痛など、体に起こる痛みの原因になります。

五積散は、この寒湿による痛みを改善する効果があります。

寒湿の痛みは、重だるい痛みで、動きづらい、という特徴があります。

高齢者の漢方治療 老化と安定平衡 [ 小山誠次 ]では、一般に、苓姜朮甘湯や五積散は、身体を動かすときに「ドッコイショ!」と掛け声を発するようになるとよく効く。と書かれています。

 

冷えがある人に使うとされているので、虚証の方全般に使えるかというと、そうでもありません。

例えば、人参湯や六君子湯、補中益気湯なら配合されるべきはずの人参が入っていません。

また、補気薬の代表のような黄耆も配合されていません。

さらには、当帰、川芎、芍薬が使われているので、補血薬の「四物湯」(しもつとう)になるかと思うと、肝心の地黄が配合されていません。

つまり、

寒・湿をはじめ、様々な鬱滞したものを「取り除く」ことが目的であり、

「五積散」そのものは、気血を補ったり、潤したりする作用はあまり期待されていないのです。

おそらく、人参や地黄は、湿を乾かす作用のジャマをするので、意図的に除かれたのではないかと思われます。

補気剤としての要素が弱いので、

胃腸虚弱な人(脾胃気虚)には、生薬が山盛りの五積散は単独では胃に障ったりして合わないことがあるかもしれません。

 

また、長期間の服用になったり、併用したりして使う場合は、配合量は少なめですが念のため甘草と麻黄の副作用には気をつけてください。

 

※枳殻(キコク)と枳実(キジツ)について
ミカン科のダイダイまたはナツミカンの、まだ緑色の未熟な果実です。五積散の場合、原典は枳殻ですが局方のものだと枳実になります。枳殻の方が、収穫時期がやや成熟に近い、またはやや大きいもので、そのため作用がやや穏やかだと言われていますが、明確な違いはないとも言われています。

 

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