芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう):KKGT

構成生薬の、川芎・当帰・阿膠・艾葉・芍薬・地黄・甘草のうち、

・当・阿葉の4つの生薬から一文字ずつとって「芎帰膠艾湯」

基本的には「止血薬」です。

女性の不正出血や、月経過多などに使われることが多い漢方薬です。

ただし、ツムラの医療用の芎帰膠艾湯については、その効能効果はなぜか「痔出血」だけです。

性器出血のために芎帰膠艾湯を服用しようとしていて、その前に効能を調べてみたら「痔出血の薬」と書かれていて驚いてしまうことがあるかもしれません。

ですが、決して痔のためだけにある薬ではありません。

製品番号が77番。構成生薬の数が7種類です。7が並びますが特に意味はないです。

 

 

芎帰膠艾湯の出典

金匱要略(3世紀)

芎帰膠艾湯の効能・適応症状

不正性器出血、月経過多

出産後(または流産後)の出血(が止まらない)

(持続的な)痔出血、下血、血尿、子宮出血、皮下出血、外傷後の内出血

貧血症

芎帰膠艾湯の構成(配合される生薬)

  • 川芎(センキュウ)※
  • 当帰(トウキ)※
  • 阿膠(アキョウ)
  • 艾葉(ガイヨウ)
  • 芍薬(シャクヤク)※
  • 地黄(ジオウ)※
  • 甘草(カンゾウ)

 

※の4つで四物湯(しもつとう)です。「補血」の基本となる方剤です。

構成生薬を整理すると

芎帰膠艾湯=四物湯+(艾葉・阿膠・甘草)

 

「四物湯」を基本にして、それに艾葉・阿膠・甘草を加えた処方と説明することができます。

ですが、

芎帰膠艾湯は『金匱要略』(3世紀)の方剤で

四物湯は『和剤局方』(12世紀)の方剤です。

歴史的には芎帰膠艾湯の方が、四物湯よりもずっと古いので、

実際は、芎帰膠艾湯から艾葉・阿膠・甘草を抜いて、シンプルにしたものが四物湯ということになります。

いずれにしても、四物湯、つまり血虚がベースにあるときの方剤だということは変わりません。

四物湯の解説はこちら

艾葉・阿膠・甘草について

四物湯の地黄・当帰・芍薬・川芎以外の3つの生薬について補足しておきます。

艾葉(ガイヨウ)

いわゆるヨモギ。

草団子やお餅などに食品としても使われますし、

お灸に使う「もぐさ」、韓国の健康法「よもぎ蒸し」などでも知られるあのヨモギです。

下腹部をよく温める生薬です。

また艾葉には安胎作用があるとされています。

下半身、特に女性では子宮を通る経脈を温めて、気血の流れを良くして、血の漏れるのを止めます。

四物湯に含まれる当帰の、冷え・腹痛・月経痛の緩和に対するはたらきを補助します。

阿膠(アキョウ)

いわゆるゼラチン。

正確にはロバ(ウマ科)の、コラーゲンを含む皮・骨・じん帯などを煮込んでつくる膠(にかわ)です。煮こごりみたいなもの。

ロバから作る阿膠は貴重なので、現在はブタやウシなど他の動物由来のコラーゲン(局方のゼラチン)で代用していることが多いです。

コラーゲンが入っていると聞くと、肌や血管に良さそうというイメージですが、

生薬としての阿膠は、

膀胱炎や血尿などのときに使われる「猪苓湯」(ちょれいとう)にも配合されているように、止血の効果が期待される生薬です。

これも四物湯の補血・滋陰のはたらきをさらに補い、止血の効果がプラスされます。

甘草(カンゾウ)

甘草は諸薬を調和させるためもありますが

四物湯の中に芍薬が入っていますので

芍薬+甘草⇒芍薬甘草湯となり、止痛の効果も加わっています。

 

まとめますと、芎帰膠艾湯は

四物湯 + 艾葉・阿膠・甘草

つまりは

=血虚の改善 + 止血(と止痛)の薬と考えることができます。

 

止血薬として考えるなら、大事な生薬は、阿膠と艾葉です。

芎帰膠艾湯のことを、略して「膠艾湯」と言うのも妥当です。

芎帰膠艾湯の作用の特徴

『金匱要略』においての芎帰膠艾湯は、婦人の不正出血を治すための方剤です。

妊娠中の異常な出血、

出産後の出血がなかなか止まらない、

月経後の出血がだらだらと続く、

出血量が多くて貧血を呈したとき、など

まとめて婦人の持続的な不正性器出血に用いられる処方です。

 

ですが、生薬の配合通りに理解すれば、

まず「血虚」が基礎にあり、つまり例えば

  • 顔色が悪い
  • 皮膚につやがない
  • 皮膚がかさかさしている

などがみられ、そして出血があるとき、

  • 不正性器出血
  • 産後の出血
  • 月経過多症

またはその他の下部出血

  • 尿路(腎臓・膀胱)出血による血尿
  • 腸からの出血による下血(血便)

というものに応用されます。

一般的には、下半身・下腹部の出血に用いられています。

芎帰膠艾湯の注意点

西洋薬の止血剤のような即効性はありません。

 

処方全体として温める薬なので、「冷え症」の人向きの方剤です。

とくに艾葉は、下腹部を温め、血をめぐらせるので、炎症性・充血性の出血には適さないことがあります。

明らかな瘀血、例えば子宮筋腫のようなものに対しても使いません。

芎帰膠艾湯で出血が止まらないときは、

黄連や黄芩などを配合した清熱薬で止血した方がいい場合もあります。

 

また、芎帰膠艾湯は四物湯を含む方剤ですので、

四物湯と同様で、胃腸虚弱の方には合わないことがあります。

胃腸をフォローしたり、補気の作用のある生薬は、配合されていません。

 

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