肝鬱に「逍遥散」と「加味逍遥散」

ストレスなどの感情によって、気分が落ち込んだりイライラしたり精神的な症状が表れているときに、

漢方では「肝鬱」(かんうつ)と表現することがあります。

ただし

現在の日本においては、ストレスなど全く縁がない、という人がいるのだろうかという社会であり

大なり小なり、みなさん肝鬱の経験があるのかもしれません。

ある方がこのように言われましたが、

まさに、ニッポン一億総「肝鬱」社会です。

 

そして、

不安、いらいらなどの精神神経症状、更年期障害、

不定愁訴のような原因がはっきりしない症状を訴える方に使われる処方に

逍遥散(しょうようさん)または、加味逍遥散(かみしょうようさん)があります。

 

逍遥散と加味逍遥散、区別してる?

医療用のエキス製剤には「加味逍遥散」はありますが、

「逍遥散」がありません。

保険診療の場合は、「逍遥散」の代用として、しかたなく「加味逍遥散」を使うか、

もしくは、もしかすると

「逍遥散」と「加味逍遥散」の違いはほとんど意識せずに使われている感じもしますけど、

当然、配合されている生薬が異なるので、

「加味逍遥散」には、何が「加味」されているのかを注意点とともに整理しておきましょう。

 

 

逍遥散の構成

まず逍遥散の構成ですが

逍遙散 = 柴胡・芍薬・当帰・白朮・茯苓・生姜・甘草・薄荷

 

各生薬の大まかな働きは、

柴胡・薄荷 → 気うつ、精神不安を解消

当帰・芍薬 → (肝の)血を補う

白朮・茯苓・生姜・甘草 → 胃腸の機能を回復

という感じになります。

 

柴胡・芍薬・甘草が配合されているという点では

柴胡・芍薬・甘草 = 四逆散(-枳実)とみることができます

四逆散は、ストレスでお腹が痛くなったり、手のひらが緊張の汗で湿っているような方に使う処方です。

当帰・芍薬は、四物湯(しもつとう)の構成生薬です。

四物湯は補血薬の基本処方ですが、婦人科においては月経異常を調整する目的もあります。

ストレスや気うつが著しいときは、消化器系に影響が現れます。

腹痛、腹鳴、軟便、下痢、便秘、食欲不振など。

逍遙散には、ここのあたりをフォローすべく、

白朮・茯苓・生姜・甘草という消化機能を改善する生薬も配合されています。

逍遥散についてはこちらも参考に→肝とストレスの影響と逍遥散(しょうようさん)について

 

逍遥散と加味逍遥散の違い

では、次に加味逍遥散。

加味逍遥散 = 逍遙散 + 牡丹皮・山梔子

ですので、加味されているのは牡丹皮・山梔子です。

 

  • 山梔子(サンシシ)は、アカネ科のクチナシの果実
  • 牡丹皮(ボタンピ)は、ボタン科のボタンの根の皮

クチナシの色素は着色料としても指定されていて、栗きんとん、たくあん、中華麺とか、お菓子とか、特に黄色い食べ物によく使われています。
加味逍遥散のエキスの色もやはり黄色っぽくて、ちなみにツムラやクラシエのなど24番の袋の色も黄色です。

 

ストレスで「肝」の気血の流れが悪くなると、肝の熱が発生しやすくなります。

その熱によって、精神不安、不眠、頭痛、炎症、湿疹、のぼせ、めまい等が起こることがあります。

加味逍遥散においては、

牡丹皮・山梔子はともに、熱の症状を抑える薬、清熱薬としての効果を期待して配合されています。

つまり、加味逍遥散は、逍遥散の症状で、さらに熱証がみられるときに用います。

熱とは体温計で測る熱ではありません。

口が渇く、
尿の色が濃くなる、
怒りっぽくなる

などの熱っぽいときです。

 

加味逍遥散を使うのは「熱」がポイント

よく、「イライラなどの症状があれば加味逍遥散」と書かれていますが、

イライラにもいろいろなイライラがあると思います。

ただのイライラだけであれば逍遥散でも適応内です。

山梔子と牡丹皮が必要なのは、熱の症状があるときです。

多汗、顔面紅潮、目の充血、便秘、

のぼせて熱がるとか、イライラが激しいとか、カッカして怒りっぽいとかのときには、

冷やすために加味逍遥散が必要です。

また、逍遥散が適する方は通常、

ストレスがかかると食欲がなくなることが多いです。そして痩せることがあります。

逆に、やけ食いのように、ストレス時に食欲が増したり、過剰に食べたくなる場合もあります。

このときは胃の部分に熱があるための症状と考えられるので加味逍遥散が適します。

 

加味逍遥散の注意点

逆に注意が必要なのは

山梔子と牡丹皮の清熱作用とは、体の内側の熱症状を抑えるということなので

簡単に言えば、体を冷やします。

もし「冷え」の症状がみられるとか、

冷えると調子が悪くなるような人に、清熱薬を使い続けるのには問題があります。

冷えることもあれば、のぼせることもあるという人もいるかもしれませんが、

逍遥散で十分なときは、加味逍遥散で代用するのではなくて、

本来であれば、逍遥散と加味逍遥散は、使い分けた方がよいということです。

加味逍遥散の解説ページはこちら

 

立てば芍薬 座れば牡丹

さいごに余談ですが

加味逍遥散には芍薬(シャクヤク)と牡丹(ボタン)が入ります。

「立てば芍薬、座れば牡丹」とは、美しい女性を例える言葉です。

美しいのは花ですが、生薬としては根を使います。

『わかりやすい漢方薬』(渡辺武著)という本に面白い解説がありまして、

簡単に要約すると、

立てば芍薬、座れば牡丹、というのは、

腹が立てば芍薬、座り込んでしまえば牡丹、と考えて

いつも腹を立てている女性には芍薬を飲ませなさい、

何をするにもおっくうで、一度座るとそのまま座りこんでしまう女性には牡丹を飲ませない、

ということらしいです。

つまり、花のような容姿の美しさだけではなくて、

漢方的には、根っこの芍薬や牡丹によって、根本から健康になり美しくなれるのかもしれません。

 

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