白朮(ビャクジュツ)

白朮は漢方では水毒を除く要薬とされています。

また、補気健脾の効能があります。

胃腸の働きを助けつつ、消化管の水分を除きます。

補気薬でもありますし、利水薬でもあります。

そのため、甘草ほどではありませんが、非常に多くの漢方薬に配合される重要な生薬です。

代表的なものでは、六君子湯、補中益気湯、十全大補湯、苓桂朮甘湯、真武湯、茯苓飲、人参湯、加味逍遙散、帰脾湯など。

蒼朮(ソウジュツ)を含めた「朮」としては、だいたい3割くらいの方剤に配合されているようです。

(白朮と蒼朮の違いについては後述します。)

 

白朮の利水作用

まず体液について簡単に確認しておきます。

人の体液量は体重の約60%と言われています。そのうち細胞内液として約40%、残りの細胞外液は約20%です。

20%の細胞外液の一部は、血液の中に血漿(けっしょう)としてあります。つまり血管の中にあります。これが5%。

それ以外の15%が、組織間液になります。

そして、この組織間液が多く溜まってしまった状態が、むくみ(浮腫)です。

余分は組織間液は、毛細血管に取り込まれて静脈へ戻り、循環血の一部になる、

もしくは一部はリンパ管に入って、リンパ節で異物・毒素など悪いものを減らして、やはり静脈へ戻ります。

 

ということを考慮しまして、

白朮の利水作用とはどういうものか、シンプルに言い換えれば

むくみの原因になっている組織間液を毛細血管側に引き込む作用、ということになります。

それによって

・組織間液が減り、むくみ・水毒の状態が改善されます。

・水分を内側へ引き込むので、体表から汗は出にくくなります。

・循環血量が増えるので、尿量が増えます。

 

 

白朮を配合しない漢方薬

白朮には、組織間液を毛細血管に引き込む作用があると考えれば、

逆に、そうされては困る漢方薬には白朮は配合されません。

 

例えば、葛根湯(かっこんとう)

葛根湯は、身体の外側から侵入した外邪を、発汗によって外に追い出して風邪を治すための薬です。

汗とともに外に追い出したいものを、内に引き込んでしまってはいけませんの、白朮は配合されません。

同様に、桂枝湯、麻黄湯をはじめとして、感冒に使われる漢方薬には(基本的には)白朮が入っていません。(五積散などの例外はありますが)

 

それから、炎症があって化膿しているときに使う漢方薬、

排膿作用を期待する漢方薬には白朮は入っていません。

やはり膿や毒素などを体表から外に出したい時に、内側に引き込んでしまう白朮はジャマになります。

排膿目的で使う、排膿散及湯(はいのうさんきゅとう)

化膿性の腫れものに使う、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)、荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)

ニキビに使う、清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)

蓄膿症に使う、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)

痔に使う、乙字湯(おつじとう)

などは確かに白朮が配合されていません。

 

漢方薬の治療原則でも

「先表後裏」と「先急後緩」という治療原則があります。

二つの症状が起きて、漢方薬を2種類(以上)使う必要があるときに、どのように治療すべきか。

それは、

表証(体表の症状)と裏証(消化器の症状)とがあった場合は、先に表証を治療してから、裏証を治療しなさい。

急迫な症状があればそれを先に治療してから、その後、穏やかな症状の方を治療しなさい、という教えです。

難しいことはともかく、例えば、

体質改善の目的で普段から「補中益気湯」を服用している人が、風邪をひいて「葛根湯」が処方されました。

そのとき「補中益気湯」の服用は続けるべきか、止めるべきか。

原則に従うなら、今まで服用していた「補中益気湯」などは一旦すべて中止して、

先に表の症状または急な症状、つまりこの場合、風邪を治すための「葛根湯」をまず優先して服用する、

そして風邪が治ったら「葛根湯」を中止して、「補中益気湯」を再開すべし、ということになります。

そうすることによって、このときも「補中益気湯」の白朮が、「葛根湯」の作用のジャマをしてしまうのを避けることができます。

(※あくまで原則としてですので、葛根湯と補中益気湯をあえて併用される場合もあります。)

 

白朮と蒼朮について

ついでに触れておきますが、

生薬としては二つはハッキリと区別されています。

しかし『神農本草経』『傷寒論』『金匱要略』などの古典においては「朮」としか記載されていなくて

白朮を使うべきか蒼朮を使うべきか明確ではない方剤もあります。

実際にメーカーによって使い分けが異なり、白朮と蒼朮の違いについてはよく議論されるところです。(五苓散や防己黄耆湯など)

一般的には

白朮は健脾に優れていて、蒼朮は燥湿に優れている、ということなので、

どちらが正解かということではなく、症状に応じて使い分けができればいいのだろうと思われます。

平胃散、消風散、桂枝加朮附湯、疎経活血湯、越婢加朮湯などは通常、蒼朮が使われます。

白朮が、アトラクチロンを主な精油成分とするキク科オケラ属のオケラAtractylodes japonicaの(周皮を除いた)根茎

蒼朮が、同じくキク科オケラ属のヒネソールを特異的な精油成分とするホソバオケラAtractylodes lanceaの根茎

としています。

ヒネソールは長針状の結晶として析出することが多く、特に冬などは生薬に白いカビが付いたように見えるのが蒼朮の特徴です。

半夏白朮天麻湯や補気建中湯、二朮湯など、白朮と蒼朮がともに使われる方剤もあります。

 

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