越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)の作用について、漢方の観点から説明します。

越婢加朮湯は、リウマチや腎炎の薬としても知られていますが、それだけだと思っていたらもったいない。

花粉症(目や鼻の症状)にも効果があることが分かっていただければ幸いです。

 

花粉症なのに越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)?

漢方薬に詳しい人であれば、

アレルギー性結膜炎や花粉症で「越婢加朮湯」が処方されたと聞いたとき、「あぁなるほどね」と思えるのですが、

もしそうではない人が、

花粉症で病院を受診して「越婢加朮湯」を出された場合、

「越婢加朮湯」とはいったいどんな薬なのかとネットなどで調べてみて、

そうすると、その効能効果にはまず、

関節痛や関節炎、関節リウマチの薬、

または腎炎やネフローゼに使うとか、湿疹などの皮膚炎に使う、

などと書かれているので、

出された薬が間違っているのではないかと心配になることがあるかもれません。

 

「越婢加朮湯」(えっぴかじゅつとう)は実際のところ、

実証タイプで、花粉症の時期に瞼(まぶた)が腫れる人、目が赤くてかゆい人、

鼻粘膜は熱をもって、むくみ、鼻の通りが悪くなる人などにも用いられることがあります。

 

 

越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)はどんな薬か

まず、何となくイメージが掴めるように、「越婢加朮湯」と生薬構成の近い方剤を麻黄湯から順に並べてみます。

麻黄湯(まおうとう)

麻黄・桂枝・杏仁・甘草

麻黄を使う漢方薬の基本処方となります。咳や関節痛を伴う感冒、インフルエンザなどの急性症状に用いられます。

麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)

麻黄・石膏・杏仁・甘草

麻黄湯の桂枝を、石膏に代えると麻杏甘石湯になります。清熱作用(炎症を鎮める作用)のある石膏を加えているので、気管支炎や喘息など、粘膜に炎症があるときに用いられます。

越婢湯(えっぴとう)

麻黄・石膏・甘草・大棗・生姜

麻杏甘石湯から杏仁を抜き、大棗・生姜を加えると越婢湯です。杏仁の鎮咳去痰作用が弱くなる代わりに、大棗・生姜で胃腸の働きを助け、水代謝を良くします。

越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)

麻黄・石膏・甘草・大棗・生姜・蒼朮または白朮

越婢湯に朮を加えたものが、越婢加朮湯です。朮によって、水代謝を良くして浮腫(過剰な水分)を除く作用が強化されます。

防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)

防已・黄耆・甘草・大棗・生姜・蒼朮(または白朮)

越婢加朮湯の(実証向きの)麻黄・石膏を、防已・黄耆に代えると、防己黄耆湯になります。防己黄耆湯は、虚証で浮腫のある人向きの方剤です。

関連記事⇒「麻黄湯」「桂枝湯」から湿邪へ対しての展開

 

ということで、越婢加朮湯の、麻黄・石膏・朮という特徴をみれば

急性で、炎症があって、むくみ・腫れがある症状に使えそうな漢方薬、ということが分かります。

 

麻黄-石膏の組み合わせについて

麻黄⇒発汗作用、と考えてしまいますが、

麻黄湯や葛根湯の強い発汗作用は「麻黄+桂枝」によるものです。

桂枝の血管拡張作用、体表を温める作用と組むためによく発汗します。

「麻杏甘石湯」や「越婢加朮湯」で、最も配合量が多いのは石膏です。

石膏は逆に冷やす働きのある生薬ですので、

桂枝を石膏に入れ替えただけで、寒熱の作用が逆になります。

このときは、体の水分は汗としてではなく、尿としてよく出るようになります。

麻黄-石膏は、主に(漢方的な)肺の炎症や、腫れを抑える働きが期待されて、

そこに朮が加われば、さらに浮腫を(尿として)引かせる薬になります。

 

ちなみに

麻黄+桂枝 ⇒ 発汗

麻黄+石膏 ⇒ 利水(浮腫の除去)

そして、

麻黄+桂枝+石膏だと ⇒ 発汗+利水 です。

医療用エキス製剤にはありませんが、「大青竜湯」(だいせいりゅうとう)は「麻黄+桂枝+石膏」の代表的な方剤です。

もし、[麻黄-石膏]の組み合わせをもつ漢方薬と、[麻黄-桂枝]の組み合わせをもつ漢方薬を併用した場合、

麻黄が重複するというだけでなく、体の水分を喪失しやすい「麻黄-桂枝-石膏」の組み合わせとなってしまいます。

例えば、「越婢加朮湯」+「小青竜湯」など。

体質をよく考慮して、短期間のみの使用に止めなくてはいけません。

※越婢加朮湯は特にエキス製剤の中でも麻黄の配合量が多い方剤ですので、単独であっても麻黄による副作用の発現に注意が必要です。

 

なぜ目の症状にも使えるのか?

では、越婢加朮湯の効能書きに載っている疾患、

腎炎、関節リウマチ、湿疹、などと花粉症が同じ薬で治療できるのか。

水の代謝は、東洋医学的においては「脾」「肺」「腎」が関わり合っています。

つまり、一見バラバラな症状について書かれているように感じますが、

炎症があって、「脾」「肺」「腎」いずれかの水の代謝に影響が表れたために起こっている症状と考えればよく似た病態です。

では、まぶたの腫れ、結膜の炎症はどうか。

瞼(まぶた)や結膜というと、眼の一部のように考えてしまいますが、少し違います。

まぶたの内側には(涙を送り出している)涙腺があり、腫れやすいところです。まぶたは当然、眼球とは組織が別です。

結膜は、黒目をおおう角膜と同じように、まぶたの裏~白目をおおう一番外側にある膜。

まぶたの裏に一部は隠れていますが、やはり眼の中にあるわけではなく表面にあるわけなので、自然界の花粉や菌などの異物が直接触れてしまう場所です。

東洋医学的な分類では、

まぶた(肌肉)は「脾」の範囲

結膜は鼻(粘膜)と同様、「肺」の範囲

と考えて差し支えありませんので、

麻黄剤であって、「脾」や「肺」に作用にする生薬が配合された越婢加朮湯が、

花粉症やアレルギー性結膜炎に使われても全く問題はない、ということです。

 

花粉症に使われると意外に思われるかもしれない漢方薬

花粉症といえば「小青竜湯」(しょうせいりゅうとう)が有名ですが、

花粉症だからとりあえず「小青竜湯」というわけにはいけません。

その他に、越婢加朮湯だけではなく、

麻黄・石膏を配合して代謝を良くするものといえば、「防風通聖散」(ぼうふうつうしょうさん)もそうですし、

温めながら水の代謝を良くする作用があるものといえば

「当帰芍薬散」(とうきしゃくやくさん)や「藿香正気散」(かっこうしょうきさん)などもあり、

症状、体質によっては、様々な漢方薬が使われたとしてもおかしくありません。

 

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