抑肝散(よくかんさん):YKS

近年になって高齢者に処方されることも増え、使用量が年々増えている漢方薬のひとつです。

認知症の薬というイメージを持っている人も多いかもしれませんが、

もともとは小児のための方剤です。

夜泣き、疳(かん)の虫、チック、ひきつけなど、情緒が不安定な状態にある子供に対して、

または、そんな子供への不安やイライラで育児ストレスを抱える母親に対して用いられてきたものです。

育児ストレスを抱えるのは母親だけでなく、現代においては当然、父親だったり祖父母である可能性もありまして、

子供から高齢者まで、男女を問わず、非常に幅広く使われて然るべき漢方薬です。

東洋医学では情緒や精神状態を「肝」で表現します。

感情を制御できず、イライラ、怒り、神経が興奮するのは「肝」がたかぶった状態です。

それを抑える薬という意味で「抑肝散」です。

医療用エキス製剤には、オースギとツムラがあります。

 

 

抑肝散の出典

保嬰金鏡録、保嬰撮要(16世紀)

※小児医学書です

抑肝散を構成する生薬

柴胡(サイコ)
釣藤鈎(チョウトウコウ)
当帰(トウキ)
川芎(センキュウ)
白朮(ビャクジュツ)※
茯苓(ブクリョウ)
甘草(カンゾウ)

※白朮の代わりに蒼朮(ソウジュツ)を使っているメーカーがあります。

抑肝散の効能・適応症状

子供の夜泣き、疳(かん)の虫、チック、歯ぎしり

おちつきがない、注意欠陥多動性障害(ADHD)

怒りっぽい、イライラ、神経症、不眠症

眼瞼痙攣(まぶたのピクピク)、手足のふるえ、ひきつけ(憤怒けいれん)

てんかんやパーキンソンなどによる痙攣、脳血管障害後遺症(不穏、易怒性)、振戦

更年期障害、月経前症候群、自律神経失調症、高血圧

認知症の行動・心理症状(BPSD・周辺症状)のうち徘徊・暴言・暴力・せん妄などの陽性症状

高齢者の夜間せん妄(夜間神経症)、急性期脳卒中患者のせん妄・がん患者のせん妄・術後におけるせん妄、麻薬による異常行動

神経症性疼痛(NSAIDsが効きにくいストレスを原因とする痛み)、慢性疼痛、心因性頭痛

  • 保険適応外の症状を含みます。
  • 上記の症状に応用が可能という意味であり、すべての症状が抑肝散で治せる、ということではありません。

抑肝散の使用のポイント

「逍遥散」と生薬の構成がよく似ています。釣藤鈎と川芎以外は、逍遥散と共通する生薬です。

抑肝散には釣藤鈎が配合されるので、筋肉のけいれん、ひきつり、手足のふるえ、ふらつきなどを改善するとともに、鎮静・催眠の効果があります。

釣藤鈎・柴胡によって、イライラや興奮を抑えます。またその他の生薬も、気血の状態を改善することでストレスに対する抵抗力を高めています。

神経が高ぶって、怒りやすい、大声で怒鳴る、人やものにあたる、キレやすい、等がある人に用いられることが多いです。

原典には、子供だけでなく母も同時に服用(治療)する方法が勧めらています(子母同服)。母の精神状態が子に、子の精神状態が母に、お互いに影響してしまっていることが多々あるためです。

状況によっては、同じ理屈で、夫婦で同服、介護者と同服、という方法も有効かもしれません。

胃腸の弱い方、悪心・嘔吐のある方は、抑肝散に陳皮と半夏を加えた「抑肝散加陳皮半夏」が用いられます。

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抑肝散の副作用・注意点

高齢者のせん妄に用いる際には、まず現在服用している薬の中に、せん妄を招いている可能性のある薬剤がないか、もしあればそれを中止できないかの検討もしてください。

OTCの抑肝散を小児に使用する場合は、製品ごとに使用できる年齢と用法用量をよくご確認ください。

高齢者には長期間使用されることが多いので、甘草による副作用(低カリウム血症など)に注意してください。

  • 用法用量や使用上の注意は、医師・薬剤師の指示、または添付文書の説明を守ってください。

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