桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):KBG

駆瘀血剤の最も代表的な処方。様々な「瘀血」による症状に対して使われている漢方薬です。

主に血行不良の改善、または血行不良による痛みの緩和にはたらき、血の巡りが悪いことで起こる諸症状に用いることができます。

当帰芍薬散加味逍遙散と並んで、三大漢方婦人薬のひとつとも言われますが、

一般的には「瘀血」に対する処方ですので、

月経不順、不妊症、子宮内膜症、子宮筋腫のほか、男女にかかわらず、打撲、関節痛、痔、頭痛、肩こり、冷えなどに応用されています。

桂枝茯苓丸の出典

『金匱要略』(3世紀)

金匱要略では、婦人の「癥痼」を治す処方。元々は、腹腔内の腫瘤(例えば子宮筋腫や卵巣膿腫など)があって、それが原因で月経異常、不正出血、下腹部痛が起こっているときに、桂枝茯苓丸が使われていたということです。

桂枝茯苓丸の成分(構成している生薬)とその働き

  • 桂枝(ケイシ)または桂皮(ケイヒ)
  • 茯苓(ブクリョウ)
  • 桃仁(トウニン)
  • 牡丹皮(ボタンピ)
  • 芍薬(シャクヤク)

 

人体を構成する要素を簡単に「気」「血」「水」と分けたとき、この「気血水」がすべて滞りなく人体を巡っていることが健康な状態だとされます。

「桂枝茯苓丸」に配合されている生薬で考えると、

桂枝茯苓丸という名前ではありますが、

血」の流れを良くする働きを持つ生薬は桂枝・茯苓ではなく、後半の桃仁・牡丹皮・芍薬の方です。

桂枝は気」の流れを、茯苓は水」の代謝を改善します。

    • 「気」の巡りを良くする・・・桂枝
    • 「血」の巡りを良くする・・・牡丹皮・桃仁・芍薬
    • 「水」の巡りを良くする・・・茯苓

牡丹皮・桃仁・芍薬の3つが協力して「血」の巡りを良くします。

「血」が巡るためには「気」のはたらきも欠かせません。

血が滞ることで、経脈の気の流れが悪くなり、手足の冷えや、冷えのぼせ、肩こりが起こります。これに桂枝が対応し、「気」を巡らせて補助します。

血が流れないと水の流れも良くないので、めまいや頭重感が現れることもあります。これに茯苓が対応し、「血」の流れが悪くなることによって生じる「水」の滞りを予防します。

ということで、桂枝茯苓丸は気血水の巡りを改善しますが、生薬の配分を考えれば、「血」の巡りに重点を置いている漢方薬だということが分かります。

つまり、桂枝茯苓丸は基本的に、血の巡りが悪い、血行不良、微小血管の循環障害の病態などがあるときに使われます。

血の巡りが悪い、または血が一か所に滞っている状態を漢方では、瘀血(おけつ)と言います。

瘀血の特徴として、ズキズキとした鋭い痛みを伴います。

桂枝茯苓丸の「効能・効果」に書かれている様々な諸症というのは、瘀血(とそれによる痛み)が関係しているものと考えてください。

牡丹皮・桃仁・芍薬は、瘀血を解消するとともに、鎮痛効果があります。

牡丹皮と芍薬はともにボタン科の植物の根の部分(牡丹皮は根皮)で、ともに抗炎症作用をもちます。解熱・消炎・鎮痛薬として働きます。

よく「桂枝茯苓丸」は婦人科で使われる代表的な漢方薬だと言われますが、男性でも問題なく服用できます。

桂枝茯苓丸の効能・適応症状

月経痛、月経困難、月経不順、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮周囲炎、卵巣炎、不正性器出血、不妊症

動脈硬化症、手足の冷え、冷えのぼせ

更年期障害、血の道症(肩こり、頭痛、めまい、のぼせ、冷え症、精神不安)、更年期の高血圧

しもやけ、しみ、にきび、吹き出物、くま・アザができやすい

打撲症(打ち身)、皮下出血、関節痛、腹膜炎、皮膚炎、蕁麻疹、

睾丸炎、慢性前立腺炎、

痔疾、痔出血

  • 保険適応外の症状を含みます。
  • 上記の症状に応用が可能という意味であり、すべての症状が桂枝茯苓丸で治せる、ということではありません。

桂枝茯苓丸の使用のポイント

血流の改善、抗炎症を目標に、幅広く適応されます。

当帰芍薬散が筋肉の軟弱な人に用いるのに対して、桂枝茯苓丸は筋肉質の人に用いられる傾向があります。

更年期障害ののぼせに伴う精神不安にも効果があります。

瘀血は男女を問わず、全身に起こりうるものですので、婦人科における代表的な薬ですが、男性でももちろん使えます。

瘀血による月経痛などの痛みは、刺すような痛みで、いつも同じ部分が痛むのが特徴です。

桂枝茯苓丸の適応で、さらに皮膚症状があるときや、浮腫がみられるとき、痛みが強いときには、薏苡仁(ヨクイニン)を加えた「桂枝茯苓丸加薏苡仁」(けいしぶくりょうがんかよくいにん)が使われます。

便秘の傾向が強い場合は、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)の方が適するかもしれません。

桂枝茯苓丸の副作用・注意点

  • 月経不順や月経痛に使用した際、一過性に、経血量や血の塊が増えることがあります。
  • 長期に服用する際には胃腸障害の発現に注意してください。
  • 月経痛など下腹部の痛みが強い場合は、「芍薬甘草湯」や「当帰建中湯」などが併用されることがあります。
  • 瀉下作用は弱いですが、軟便ぎみの方は悪化することがあります。
  • 桂枝茯苓丸という名前が示すように、本来は丸薬ですので、丸薬ではない煎じ薬やエキス剤の場合は「桂枝茯苓丸」と言った方が正確です。
  • 医療用であっても美肌目的の使用には保険は利きません。

※「瘀血」が結果であって、瘀血を引き起こした原因が別にある場合は、その原因に応じた治療も必要です。(→瘀血を引き起こす原因について

他の漢方薬との併用の必要性

桂枝茯苓丸は、瘀血に対しての基本的な構成に過ぎません。

桂枝茯苓丸は、瘀血を改善できる漢方薬と説明しましたが、少し言い方を変えると、瘀血を改善するだけの漢方薬だと言ってもいいかもしれません。

瘀血の改善以外に、「気」や「血」を増やす作用や、胃腸の働きを良くする作用がそれほど期待できないのです。

桂枝茯苓丸の「効能・効果」を読むと、必ず書き出しに「比較的体力があり・・・」とか「体格がしっかりしていて・・・」とあるのは、

体力がない人に対しての配慮が足りない漢方薬ということでもあります。

体力がない人には使えないということではありませんが、疲れやすい、胃腸が弱い、貧血があるなどの方は、それに応じた補気剤や補血剤などの併用を考慮する必要があります。

桃核承気湯などと比べると、長期的に処方されることのある漢方薬ですので気をつけて下さい。

妊婦さんはご注意ください

瘀血を改善するいわゆる「駆瘀血剤」に分類されるものは、流産や早産を起こすおそれがあり、基本的には妊娠中の服用は避ける必要があります。

桂枝茯苓丸には子宮収縮作用があると言われる桃仁・牡丹皮の2つが含まれています。(桂枝茯苓丸の煎じたものは、出産時に分娩促進目的で使われていたという記録もあるようです。)

通常は、桂枝茯苓丸を服用されていたとしても、妊娠が分かった時点で中止すれば問題ありません。

不妊治療で桂枝茯苓丸などの駆瘀血剤を処方されている場合、いつまで継続するかは、処方元の専門家に相談されてください。

  • 用法用量や使用上の注意は、医師・薬剤師の指示、または添付文書の説明を守ってください。

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