呉茱萸湯(ごしゅゆとう):GSY

胃が冷えたことに伴う、嘔吐・吃逆(しゃっくり)に対する代表処方です。

胃が冷えると胃の蠕動が弱まるので、胃が食べ物を受け付けなくなり、ムカムカと吐き気が起こります。

呉茱萸湯は、温める作用の強い「呉茱萸」をメインにして、胃腸の働きを改善する生薬たちで構成される漢方薬です。

最近では、片頭痛に効果がある漢方薬としてもよく知られています。

胃の冷えと頭痛は、関係ないような症状にも思えますが、

中医学的には、胃が冷えるとすぐ横にある「肝」も冷えるため、

肝経の経絡が伸びている頭頂部~側頭部に痛みが起こると考えることができます。

よって、冷え、吐き気、頭痛が同時にみられたときはまず「呉茱萸湯」です。

頭痛の中でも特に片頭痛は吐き気を伴うことが多いので、「呉茱萸湯」が片頭痛の薬として定着してきています。

呉茱萸湯の出典

傷寒論、金匱要略(3世紀)

呉茱萸湯を構成する生薬

  • 呉茱萸(ゴシュユ)
  • 人参(ニンジン)
  • 生姜(ショウキョウ)
  • 大棗(タイソウ)

呉茱萸は、ミカン科の落葉低木、3~5mm程の紫赤色の実です。

呉茱萸湯の効能・適応症状

(吐き気を伴う)片頭痛、習慣性頭痛、神経性頭痛

胃が冷えたことで起こる諸症状(胃痛、お腹の張り、食欲低下、吐き気、空えずき、胃酸過多、下痢)

しゃっくり(吃逆)、呑酸(酸っぱい液が口まで上がってくる)

胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃下垂、胃腸虚弱、慢性消化不良症、逆流性食道炎

めまい、メニエール病、自律神経失調症、過敏性腸症候群

(吐き気を伴う)月経痛

  • 保険適応外の症状を含みます。
  • 上記の症状に応用が可能という意味であり、すべての症状が呉茱萸湯で治せる、ということではありません。

片頭痛でも緊張型頭痛でも「呉茱萸湯」が効く人は胃が冷えている

呉茱萸湯は特に、偏頭痛のときの漢方薬としてよく知られています。が、根本的には「胃寒」のときの薬とされます。

胃寒、つまり胃が冷えたときの症状です。

胃が痛い、食べると吐き気がする、上腹部がつかえる、などの症状を抑えるための処方です。

確かに配合されている呉茱萸(ごしゅゆ)には鎮痛作用があります。

しかし、ただ単に痛みを和らげるということではなく、基本的には、冷えに対しての、温めてあげる処方であります。

呉茱萸・人参・生姜・大棗は、すべて温めるはたらきのある生薬ばかり

片頭痛などの激しい頭痛にも効果があるというだけでなく、冷えたことで症状が悪化する、というのもポイントです。

頭痛のときは、その痛みのせいで、本人もあまり意識が向かないかもしれませんが、手足は冷えていることがあります。

また、頭痛に伴い、吐き気や嘔吐がみられることもありますが、

このときの吐き気や嘔吐も、漢方的には胃が冷えたことによって起こる症状だと考えられます。

呉茱萸・生姜は胃を温め、人参・大棗・生姜で温めるとともに胃腸機能を高めます。

呉茱萸湯が適する「冷え」のときの伴いやすい症状

手足やお腹の冷え
肩や首すじ~こめかみの凝り(こり)
激しい頭痛
吐き気(でも吐けない)
よだれや薄い唾液が多い
しゃっくり、などです。

(すべてが当てはまらなくてもいいです)

吐き気、嘔吐だけならいろいろな原因で起こりそうですが、

よだれや唾(ツバ)がこみ上げてくるのは、胃が冷えているときの特徴です。

冷えているときは、口渇がありません。

胃の「気」について補足

「胃」というのは、飲食物を、上から下へ送るのが本来の仕事です。

よって「胃」の「気」の動きは下向きが正常です。

胃が冷えてしまうと、「気」は逆に上へ上がろうとします。

ですから、胃酸が逆流したり、しゃっくりがでたりします。

冷えると消化吸収の機能も弱りますから、胃に水も溜まりやすく、胃が重く、膨満感もあります。

吐き気も強く出てしまいます。

「胃」の冷えと「肝」の冷え

胃と肝の場所は、非常に近い位置にあります。

胃の冷えたときは、肝も冷えます。

肝の気の不足しているときは、さらに冷えが入り込みやすいです。

肝の経絡は、頭部に伸びて、頭頂部~側頭部に及んでいますので、

理論的にも、冷えが肝の経絡に及ぶと、その結果、頭痛(片頭痛)が起こると考えられます。

呉茱萸湯の使用のポイントまとめ

体(特に腹部)を温める生薬で構成されていて、冷え症の人向きの方剤です。

胃腸のはたらきを改善する効果があるので、

頭痛にも使われますが、頭痛に限ることなく、また片頭痛にも限らず、

冷えが原因で、吐き気などの消化器症状が伴うような症状に使える方剤です。

例えば、月経痛でも使えます。

逆に、熱感があるような頭痛では使えません。

ロキソニンやバファリンなどの鎮痛剤ですぐ胃を悪くする人にも使える、という利点があると思います。

普段から、寒さをいやがり、冷たい飲食物を避けていて、暖かい飲食物を好むという人によく適します。

冷えが関係して起こる嘔吐や発作性の頭痛に特に効果があります。

涎(よだれ)や唾(つば)が多く出て吐きたくなるのも、胃が冷えているときに起こりやすい症状です。

呉茱萸・生姜には制吐作用もあります。

消化器系の症状に対しては頭痛がなくても用いることができます。

呉茱萸湯の副作用・注意点

にがい漢方薬としても有名です。

初めて服用する人には予め「にがい漢方薬」だと伝えておいた方がいいと思います。

※呉茱萸湯が合う人の中には「そんなににがくない」と平気で飲む人もいます。

冷えがあることが大事で、暑がりの人には通常あまり用いられません。

食べ過ぎによる呑酸、二日酔いによる吐き気や頭痛、高血圧による頭痛には適しません。

吐き気、胸やけの症状が強いときは「冷服」、つまり冷たい水で服用した方が飲みやすいです。ただし、冷たすぎると胃をさらに冷やしますのでご注意を。

エキス製剤だとそのまま水や白湯で一気に飲みやすいのですが、吐き気のあるときは少量ずつでも構いません。

  • 用法用量や使用上の注意は、医師・薬剤師の指示、または添付文書の説明を守ってください。

呉茱萸湯の即効性

ある漢方薬局では、

頭痛で来局された人で「呉茱萸湯」が合いそうだなと思う人には、問診をはじめる前にまず「呉茱萸湯」を飲んでもらうそうです。

そうすると、問診が終わるころには、もう頭痛は治まっている、という話です。

頓服でも十分効果の期待できる漢方薬です。

呉茱萸湯と人参湯の違い

「呉茱萸湯」は、人参・生姜・大棗・呉茱萸

「人参湯」は、人参・乾姜・白朮・甘草

原典はどちらも『傷寒論』で、

4つの生薬で構成されていて、人参と生姜(乾姜)が使われています。

脾の働きを高める人参と、温める生姜・乾姜です。

両方とも冷えのある人に対して、お腹を温めることを期待できる方剤です。

虚証で、冷え症、または、お腹を冷やして調子が悪くなる人に使われます。

では、違いはというと、

まず呉茱萸湯は上述したように、

お腹の冷えが、経絡に沿って上がり、頭部(側頭部)におよんで、頭痛(片頭痛)となるとき。

呉茱萸が、厥陰肝経を温める主薬であり、寒気の上昇を下降させて、痛みをとめます。

また、呉茱萸と生姜は、制吐作用をもちます。胃が冷えたとき、つばが多くなる、吐き気がするときに適します。

大棗は、胃腸の働きを助けるとともに、呉茱萸と生姜の刺激性を緩和しています。

一方、「人参湯」には白朮が入ります。

白朮は、胃腸の働きを助けるとともに、利水効果によって、下痢を和らげます。

甘草は、腹痛を抑えるのと、乾姜の刺激性を緩和する目的があります。

以上を簡単にまとめるとすれば、

お腹の冷えが上って頭痛→「呉茱萸湯」

お腹の冷えが下って下痢→「人参湯」

です。

呉茱萸湯が苦くて服用できないときなど

冷えが原因の頭痛であれば、「人参湯」でも効果のあることがあります。

その場合、「人参湯」に桂枝を加えた「桂枝人参湯」(けいしにんじんとう)の方がより適します。

 

  関連コンテンツ

スポンサーリンク