平成30年2月に行われた、103回薬剤師国家試験から、生薬の問題と、その解説です。

問題

問 109 生薬の基原と用途に関する記述のうち、正しいものはどれか。2つ選べ。

  1. キョウニン及びトウニンは、いずれもバラ科植物の種子を基原とし、駆瘀血薬として用いる。
  2. トウキ及びセンキュウは、いずれもセリ科植物の葉を基原とし、それぞれ補血薬及び駆瘀血薬として用いる。
  3. ショウキョウ及びカンキョウは、いずれもショウガ科植物ショウガの根茎を基原とするが、加工法が異なっており、薬効にも違いが認められる。
  4. ニンジン及びコウジンは、いずれもセリ科植物オタネニンジンの根を基原とし、補気薬として用いる。
  5. ソウジュツ及びビャクジュツは、いずれもキク科植物の根茎を基原とし、利水薬として用いる。

 

生薬ひとつずつの知識ではなくて、対で出題して、共通しているか相違があるかを考えさせるという点で、良い問題だと思いました。

しかし、たんに知識を問うているだけなので、知っている人にとってはとても簡単です。

知っていなくても生薬の教科書を調べれば答えはすぐに確認できるので、解説するほどのことではないかもしれませんが、

せっかくなのでここは、あえて(少ししつこいくらいに)丁寧に解説してみたいと思います。

 

 

キョウニン及びトウニン

「キョウニン及びトウニンは、いずれもバラ科植物の種子を基原とし、駆瘀血薬として用いる。」

キョウニンとトウニンを漢字で書けば、杏仁と桃仁です。

仁とは、種(たね)のことですので、アンズの種と、モモの種のことです。ただし食用のものとは種(しゅ)が違います。

アンズもモモもバラ科の植物です。アンズや桃、その他、梅やさくらんぼ等などはすべてサクラの仲間ですので、バラ科に属します。

ついでに書くと、アーモンドなんかもバラ科植物の種子を食しています。

よって、キョウニン及びトウニンが、いずれもバラ科植物の種子を基原としているのは正しいです。

問題は、いずれも駆瘀血剤として用いるのか?

まず、桃仁については、駆瘀血薬として用います。

桃核承気湯、桂枝茯苓丸、大黄牡丹皮湯、疎経活血湯などに配合されていることから明らかです。

そして、杏仁については、麻黄湯や麻杏甘石湯、清肺湯に配合されていること、または「キョウニン水」を知っていれば大丈夫だと思いますが、

止咳平喘薬、つまり咳止めや、去痰薬として用います。

駆瘀血薬としては用いられていませんので、正解は「×」になります。

しかしながら、

もし「キョウニン及びトウニンは、いずれも、潤腸通便薬として用いる。」という問題だったとしたら「〇」です。

いずれも潤腸湯(じゅんちょうとう)に配合されています。

トウキ及びセンキュウ

「トウキ及びセンキュウは、いずれもセリ科植物の葉を基原とし、それぞれ補血薬及び駆瘀血薬として用いる。」

トウキ及びセンキュウ、漢字で書けば、当帰と川芎です。

この二つをともに配合する方剤を「芎帰剤」とよぶことがあります。

当帰と川芎のペアを含む漢方薬は、たくさんあります。

もちろん、四物湯からはじまり、当帰芍薬散、温経湯、芎帰膠艾湯、当帰飲子、七物降下湯・・・

いずれも、当帰の補血作用、川芎の駆瘀血作用を期待して、多くの補血剤といわれる漢方薬に、ペアで用いられています。

また川芎は、当帰とペアを組まなくても、その駆瘀血作用による鎮痛効果を期待して用いられていることがあります。

頭痛に効果のある、葛根湯加川芎辛夷、川芎茶調散などです。

ということで、問題は、いずれもセリ科植物の葉なのか?というところ。

まず、当帰も川芎も、セリ科です。セロリやパクチー(コリアンダー)のように、セリ科特有の芳香をもちます。

もしかしたら、(個人的な印象ですが、)セロリやパクチーなどが、男性よりも女性の方が好む傾向があるように、

婦人科の代表的な漢方薬に、セリ科の当帰がよく用いられていることには意味があるのかもしれません。

そして、

肝心の薬用部位は、当帰は根、川芎は根茎です。いずれも葉ではないので、この問題も「×」です。

ちなみに、補血作用のある生薬は、根であることが多いです。

例えば補血剤の代表ともいえる四物湯(しもつとう)は、当帰・川芎・芍薬・地黄で構成されていますが、

芍薬も地黄も、根の部分です。

ショウキョウ及びカンキョウ

「ショウキョウ及びカンキョウは、いずれもショウガ科植物ショウガの根茎を基原とするが、加工法が異なっており、薬効にも違いが認められる。」

ショウキョウ及びカンキョウは、漢字で書くと、生姜と乾姜です。

生姜と書いてしまえばもうショウガ科のショウガであることは間違いないし、

料理をしない人の中には、チューブ入りの生姜しか見たことがない人もいるかもしませんが、

すりおろす前の生姜が冷蔵庫にもしあれば、それが根茎です。

生薬としては、乾燥させたヒネショウガが用いられます。

次に、乾姜とは、(これは「日本では」と但し書きが必要ですが)

ショウガを蒸して(または湯通しして)乾燥させたものが、乾姜です。

ショウキョウの成分の一つであるギンゲロールは、加熱・乾燥の過程でショーガオールに変化する、ということから薬効が変化するとされています。

生姜(ショウキョウ)は、健胃や止嘔、または感冒時の発汗などの作用を期待して、平胃散、六君子湯、葛根湯、小柴胡湯など多くの漢方薬に、

乾姜(カンキョウ)は、温める作用が強くなるので、人参湯、苓姜朮甘湯、大建中湯などに用いられます。

よって、答えは「〇」。

ちなみに、中国においては、の話をすると

生姜は、乾燥させていない生のショウガのことを指し、

乾姜は、乾燥させたショウガのことで日本の生姜(ショウキョウ)に相当します。

そうしたら、『傷寒論』などの古典に生姜と書かれているものを日本の局方の生姜で作ったらそれはつまり乾姜ではないか、とか、エキス製剤の生姜はそもそも加熱乾燥されてしまっているではないか、とか突っ込み始めるとややこしくなってくるので、このへんで終わります。

ニンジン及びコウジン

「ニンジン及びコウジンは、いずれもセリ科植物オタネニンジンの根を基原とし、補気薬として用いる。」

これはひっかけ問題の類に入るのかもしれないけれど、絶対にひっかかってはいけない。

人参がセリ科と言われれば、なんとなくそうなのかなという気持ちになるかもしれませんが、

セリ科のニンジンと言えば、

あの、スーパーや八百屋に並んでいる、動物園ではヒツジやヤギの柵の前にエサとして紙コップに入れられている、子供の頃によく歌った「1本でもにんじん」の、あの人参です。

説明するまでもなく、薬用の人参とは、別物です。

仮に「ニンジンはセリ科である」という問題なら「○」の可能性があるけれど、薬剤師国家試験においてはそれは絶対にあり得ない。

薬剤師国家試験を解いている認識があるならば、ニンジンがセリ科と書かれていた時点で「×」としなければいけません。

薬用の人参は、ウコギ科です。

これもオタネニンジン(御種人参)の加工法によって、ニンジン(人参)とコウジン(紅参)の2つがあります。

人参を蒸してから乾燥させると、紅参となります。人参は白っぽいですが、紅参は赤みがあります。

漢方薬に通常配合されているのは人参であり、高麗人参や朝鮮人参として単味で売られていて、値段がちょっと高いものは、紅参であることが多いです。

ニンジンの効能は補気だけではないですが、ニンジン及びコウジンが補気薬に分類されるのは、間違いありません。

ソウジュツ及びビャクジュツ

「ソウジュツ及びビャクジュツは、いずれもキク科植物の根茎を基原とし、利水薬として用いる。」

答えは「〇」です。

解説を端折っていきなり答えを書いてしまいましたが、

以前に「白朮が配合されていない漢方薬から分かる、白朮の利水作用の特徴 」の記事で、白朮の利水作用について書いて、と

最後に、ソウジュツとビャクジュツについて補足的に書いたことを思い出したので

そちらを参照して頂けると助かります。

 

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