五積散(ごしゃくさん):GSS

腰痛にも、カゼにも、胃もたれにも、更年期障害にも、色々な症状に使われる五積散。

「五積」(=気・血・痰・食・寒などの様々な積滞)に対する方剤。

平胃散、当帰芍薬散、二陳湯、桂枝湯、苓桂朮甘湯、苓姜朮甘湯、半夏厚朴湯など、様々な薬物が組み合わされた構成をしています。

特に、水太り体型の高齢婦人の腰痛にはファーストチョイスとされます。

色々な生薬が入り過ぎていて特徴が分かりにくいかもしれませんが、基本的には、冷えがある人、冷えると症状が悪化する人に用いるのは間違いありません。

麻黄が一応含まれますが、あまり麻黄剤の範疇には含まれません。

五積散の出典

和剤局方(12世紀)

五積散を構成する生薬

  • 蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ビャクジュツ)※
  • 当帰(トウキ)
  • 茯苓(ブクリョウ)
  • 陳皮(チンピ)
  • 半夏(ハンゲ)
  • 甘草(カンゾウ)
  • 白芷(ビャクシ)
  • 川芎(センキュウ)
  • 枳殻(キコク)または枳実(キジツ)※
  • 厚朴(コウボク)
  • 桔梗(キキョウ)
  • 桂皮(ケイヒ)または肉桂(ニッケイ)
  • 芍薬(シャクヤク)
  • 大棗(タイソウ)
  • 麻黄(マオウ)
  • 乾姜(カンキョウ)※
  • 生姜(ショウキョウ)

枳殻(キコク)と枳実(キジツ)について…
ミカン科のダイダイまたはナツミカンの、まだ緑色の未熟な果実です。五積散の場合、原典は枳殻ですが局方のものだと枳実になります。枳殻の方が、収穫時期がやや成熟に近い、またはやや大きいもので、そのため作用がやや穏やかだと言われていますが、明確な違いはないとも言われています。

医療用のエキス剤だと…
ツムラ→蒼朮と枳実で、乾姜なし生姜多め
テイコク→白朮と枳実
コタロー→蒼朮・白朮ともに配合、枳殻
などメーカーにより違いがあります。

蒼朮と白朮は厳密には異なる生薬ですが、五積散の場合はどちらが正解ということは言えません。

五積散の中の方剤

五積散にたくさん配合されている生薬から、いくつかをピックアップしてみれば、様々な方剤をみつけることができます。

平胃散

蒼朮(白朮)・甘草・陳皮・厚朴・生姜・大棗で、平胃散(へいいさん)です。胃薬として、食べすぎたりした時の胃もたれ、消化不良、腹痛、下痢などに用いることができます。枳殻(枳実)も気を巡らせて、お腹のつかえを解消させる生薬です。

当帰芍薬散

当帰・川芎・蒼朮(白朮)・茯苓・芍薬、にあと沢瀉を加えると当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)になります。冷え症でむくみやすい、月経痛、月経不順など婦人科疾患に用いることができます。

桂枝湯

甘草・桂皮・芍薬・生姜・大棗は、桂枝湯(けいしとう)です。(正確には桂皮→桂枝ですが)麻黄も使っているので、あと葛根が入れば「葛根湯」です。白芷も止痛、解表の作用があります。クーラーで冷えてしまったとかで、風邪っぽいときにも用いることができます。

二陳湯

茯苓・甘草・陳皮・半夏・生姜をみれば二陳湯(にちんとう)です。痰飲を解消する方剤です。お腹を冷やしたために、悪心や嘔吐のするときに用いることができます。

苓姜朮甘湯

蒼朮(白朮)・茯苓・甘草・乾姜は、苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)ですので、下半身や腰が冷えて痛むときに用いることができます。

その他

蒼朮(白朮)・茯苓・甘草・桂皮をみれば、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)ですし、

茯苓・半夏・厚朴・生姜は、あと蘇葉を足せば半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)になります。

また、桔梗は咳止め、排膿などの作用があります。

五積散のポイント

含まれている生薬の構成をみてみれば、

胃薬であり、風邪薬であり、痛み止めであり、浮腫をとる薬、抗ストレス薬、婦人科の薬、etc

更年期障害、不定愁訴に対して使われているのもよく分かります。

ただし、構成生薬が多い分、各生薬の分量は少ないので、

様々な症状に対応できて使いやすい、という反面、劇的に効くという感じはあまりないかもしれません。

症状のそれほど激しくないものに用いられることが多く、「五積散」をベースにし、症状に応じて他の方剤や生薬を足したりしながら応用されることもあると思います。

ほとんどが温性の生薬と、気血水のうっ滞を改善する生薬で構成されています。

冷え症、冷たいものの摂取、寒冷の環境など、体が冷えていることが影響している症状に用いられます。

普段から体を冷やさないようにすることも大事です。

冷え症で大黄が使えない場合の便秘症に用いられることがあります。

カゼの場合は、高齢者で「葛根湯」や「麻黄湯」ではちょっと副作用が心配で使いづらく、逆に穏やかに効いてほしいという場合に用いられています。

五積散の効能・適応症状

腰痛、関節痛、神経痛、筋肉痛、手足のしびれ、坐骨神経痛、脚気、リウマチ

冷え症、冷えのぼせ、下肢(下半身)のむくみ

胃炎、胃腸炎、下腹部痛、下痢、便秘、腹部膨満感、胃下垂、食欲不振

月経痛、月経困難症、月経不順、更年期障害、婦人科系機能障害、不定愁訴

頭痛、嘔吐、悪心、悪寒

感冒、冷房病やクーラーによるカゼ

  • 保険適応外の症状を含みます。
  • 上記の症状に応用が可能という意味であり、すべての症状が五積散で治せる、ということではありません。

五積散の五積について

やはりその名前が表しているように、「五積」つまり5つの積滞を解決しようとする方剤です。

食積(食べ物が停滞している)
気積(気が滞っている)
血積(血の流れが悪い)
痰積(痰湿が溜まっている)
寒積(冷えている)

きっちり5つじゃなくてもいいと思いますが、とにかく色々な問題を背負ってしまっている人のための漢方薬です。

そして、いずれにしても基本的には「冷えると悪化する症状」というのがポイントです。

もともと水毒の、むくみやすい体質の人に、さらに「冷え」が加わると、

寒湿という状態になります。これが、腰痛、関節痛、頭痛、月経痛、神経痛、腹痛など、体に起こる痛みの原因になります。

五積散は、この寒湿による痛みを改善する効果があります。

寒湿の痛みは、重だるい痛みで、動きづらい、という特徴があります。

身体を動かすときに「どっこいしょ」「よっこらしょ」と声が出してしまう人はこの傾向があります。

板前さん、スーパーの食料品を扱う仕事の人、冷蔵設備の中で仕事をする人、漁師さん、水族館の職員さん、その他仕事で水を使う環境にいる人などは、日頃から寒湿に侵されやすく、五積散の適応となることが多いようです。

五積散は冷え症の人の万能薬か?

冷えがある人に使うとされているので、虚証の方全般に使えるかというと、そうでもありません。

例えば、人参湯や六君子湯、補中益気湯なら配合されるべきはずの人参が入っていません。

また、補気薬の代表のような黄耆も配合されていません。

さらには、当帰、川芎、芍薬が使われているので、補血薬の「四物湯」(しもつとう)になるかと思うと、肝心の地黄が配合されていません。

つまり、

寒・湿をはじめ、様々な鬱滞したものを「取り除く」ことが目的であり、

五積散そのものは、気血を補ったり、潤したりする作用はあまり期待されていないのです。

おそらく、人参や地黄は、湿を乾かす作用のジャマをするので、意図的に除かれたのではないかと思われます。

補気剤としての要素が弱いので、胃腸虚弱な人(脾胃気虚)には、生薬が山盛りの五積散は単独では胃に障ったりして合わないことがあるかもしれません。

また、長期間の服用になったり、併用したりして使う場合は、配合量は少なめですが念のため甘草と麻黄の副作用には気をつけなければいけません。

麻黄による副作用:悪心、食欲低下、不眠、動悸、血圧上昇、排尿障害など

甘草による副作用:偽アルドステロン症

  • 用法用量や使用上の注意は、医師・薬剤師の指示、または添付文書の説明を守ってください。

防風通聖散と五積散の決定的な違い

 

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